朝、畑に出たら掘り返されていた。
囲ったつもりの場所を、跳び越えられていた。

イノシシとシカの被害は、一晩で一年分の労力が消えるのがいちばんつらいところです。そして「柵を張るしかない」と分かっていても、資材代が重い。電気柵一式で数万円から数十万円かかります。

この記事では、みのり補助金ナビに掲載している全国645制度のうち、鳥獣被害対策が目的の41制度を全部並べて比べました。分かったことが3つあります。

  • 同じ柵でも補助率は3/10から5/6まで、約2.7倍の開きがある
  • 狩猟免許の取得費を「全額」出す自治体が複数ある
  • 個人より団体で申請したほうが率が上がる自治体がある(最大2倍)
⚠️ 金額・要件・締切は年度で変わります。ここに載せた数値は各自治体の公式情報で確認したものですが、申請前に必ずお住まいの市町村の窓口でご確認ください。

柵の補助金:補助率は3/10〜5/6まで開きがある

電気柵・ワイヤーメッシュ柵・防護ネットの設置に使える補助です。補助率の高い順に並べました。

自治体補助率上限特徴
高知県 香美市シカ用5/6・団体3/4・個人2/350万円シカ用が突出して手厚い
福島県 喜多方市1/2以内60万円上限額は調べた中で最高
愛媛県 松山市1/2〜1/3以内50万円資材購入費が対象
奈良県 奈良市70%(柵が1.8m未満は50%)要確認柵の高さで率が変わる
三重県 いなべ市個人40%〜団体80%要確認団体申請で率が2倍
岐阜県 岐阜市資材費25万円資材費に絞って補助
福岡県 久留米市4/10要確認随時受付
熊本県 和水町30万円電気防護柵。耕作放棄地の解消とセット
徳島県 阿南市3/10以内5万円調べた中で最も率が低い

表の一番上と一番下を比べてください。高知県香美市のシカ用は5/6、徳島県阿南市は3/10以内。同じ「柵の補助金」という名前でも、30万円の柵に対して自己負担が5万円になるか21万円になるかほど違います。

💡 率の差は「自治体のやる気」ではなく「被害の深刻さ」の反映です。鳥獣被害の補助は、国の鳥獣被害防止総合対策交付金に市町村が上乗せする構造になっていて、被害が深刻な地域ほど市の持ち出しが厚くなります。隣の市より低くても、制度がないわけではありません。

柵の「高さ」で補助率が変わる自治体がある

奈良県奈良市は、有害獣防除施設の設置補助を70%で出していますが、柵の高さが1.8m未満だと50%に下がります

シカは助走なしで1.5m以上を跳びます。低い柵は「張ったのに越えられる」ことが多く、補助率の差はそのまま「効く柵かどうか」の線引きになっています。安く済ませようと低い柵にすると、補助率も下がり、しかも越えられる。柵の高さは、値段ではなく相手に合わせて決めてください。

集落でまとめると率が上がる

三重県いなべ市は個人40%に対し、団体・規模によっては80%。高知県香美市も個人2/3に対し団体3/4です。

国の交付金がもともと「集落単位で面的に張る」ことを想定しているためで、獣道を地域ごと断つほうが効果が高いという考え方が制度に入っています。

ただ、団体申請は合意形成と事務の手間がかかります。自分の畑だけ守りたいなら個人、地域で獣道を断ちたいなら団体—— 金額だけでなく、目的で選んでください。

狩猟免許:全額出す自治体が複数ある

ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。狩猟免許の取得費を全額(10/10)補助する自治体が、調べた中で4つありました。

自治体補助上限
奈良県 奈良市10/10(全額)
徳島県 吉野川市実費(10/10)13,200円
徳島県 阿南市実費(10/10・一部に上限)要確認
広島県 呉市実費(10/10)12,400円
北海道 本別町銃猟1/2・わな猟は全額要確認
栃木県 那須塩原市免許・所持許可は全額/銃購入1/25万円
高知県 香美市経費ごとに定額または2/38万円(銃猟)
長崎県 長崎市1/27,500円
奈良県 宇陀市1万円

なぜ全額なのか。どの自治体も捕獲の担い手が足りていないからです。柵は入ってくるのを防ぎますが、頭数は減りません。獲る人がいなければ、被害は毎年繰り返します。だから「免許代は出すので取ってほしい」という制度設計になっています。

長崎市の助成金は市民であれば農家でなくても申請できます。担い手そのものを増やすのが目的だからです。

まずは、わな猟から

農家が自分の畑を守る目的なら、わな猟免許から取るのが現実的です。銃猟は免許に加えて銃砲所持許可が必要で、費用も手続きも大きく変わります。

制度の側もそれを分かっていて、北海道本別町は「銃猟は1/2、わな猟は全額」とわな猟を明確に優遇しています。長崎市も助成対象を網猟・わな猟に限っています。

箱わなの購入自体に補助を出す自治体もあります。広島県呉市の箱わな購入支援事業は1/2以内・上限5万円です。

💡 捕獲に報償金を出す自治体もあります。大阪府富田林市のイノシシ捕獲報償金は1頭2,000円。免許取得の補助と組み合わせると、「取る→獲る→受け取る」が一本の線になります。

申請でつまずきやすい3つのこと

1. 買ってから申請しても、ほぼ間に合わない

補助金は交付決定を受けてから発注・購入するのが大原則です。決定前に買ったものは対象外になります。

柵は「出た、すぐ張らなければ」と急ぎがちなので、この分野は特に取りこぼしが多いと思ってください。被害が出た時点で、まず市町村の農林担当に電話です。「補助を使いたいので、いつ買っていいか教えてください」の一言で足ります。

2. 資材費だけが対象で、工事費は出ないことがある

岐阜県岐阜市の鳥獣被害対策支援事業は「防護柵の資材費」、愛媛県松山市も「資材購入費」と明記しています。

業者に施工まで頼むつもりでいると、工事費が自己負担になって計算が狂います。見積を取る前に「何が対象経費か」を確認してください。

3. 予算がなくなり次第、終わる

鳥獣対策の補助は予算枠が小さい自治体が多く、被害が集中する時期に申請が殺到して早期に締め切られます。

被害が出てから動くと間に合わないことがあるので、「去年やられた場所は、今年もやられる」という前提で、年度が替わった4月に一度問い合わせておくのが確実です。

自分の市町村の制度を探す

鳥獣被害の補助は市町村ごとにまったく違います。国の制度だけ見ても、自分が使えるものは見つかりません。

みのり補助金ナビでは、都道府県からさがすで県を選ぶと、その地域の市町村独自の制度まで一覧で確認できます。分野で絞りたい場合は分野・作物からさがすもお使いください。全制度に公式サイトの出典リンクと最終確認日をつけています。

まとめ

  • 柵の補助率は3/10〜5/6まで約2.7倍の開き。率の差は被害の深刻さの反映
  • 狩猟免許を全額補助する自治体が複数ある(奈良市・吉野川市・呉市・阿南市)
  • 集落でまとめると率が上がる自治体がある(いなべ市は個人40%→団体80%)
  • 柵の高さで補助率が変わる自治体がある(奈良市は1.8m未満で70%→50%)
  • 農家が守るならまずわな猟。本別町は銃猟1/2に対しわな猟は全額
  • 買う前に窓口へ電話。交付決定前の購入は対象外になる
  • 資材費のみ対象の制度がある。工事費まで見るか必ず確認する

柵で守り、免許を取って獲る。この2つに補助が出るということは、行政も「農家だけで抱える問題ではない」と考えているということです。ひとりで囲い続ける前に、一度窓口に電話してみてください。