「みどりの食料システム戦略推進交付金」で検索してこのページに来た方は、たいてい次のどちらかだと思います。
制度名を見かけたので中身を知りたいか、自分の取組に使えるのか確かめたいか。

先に結論を書きます。
この交付金の大半は、農業者個人ではなく都道府県・市町村・協議会が申請するものです。農業者が直接の交付先になっているメニューは、実質2つしかありません。

個人が直接使える2つ
有機転換推進事業=慣行から有機へ転換する初年度の農地に10aあたり2万円以内
先進的有機農業拡大促進事業=有機の拡大に向けたスマート農機等の導入に定額または1/2以内
⚠️⚠️ どちらも入口は「みどり認定」(みどりの食料システム法にもとづく計画の認定)です。

この記事では、令和8年度の予算資料をもとに「どのメニューを誰が申請するのか」整理します。
金額と要件は農林水産省「令和8年度みどりの食料システム戦略推進総合対策(当初予算)の概要」(令和8年4月)によります。

まず全体像:お金は「国→都道府県・市町村・協議会」と流れる

この交付金の令和8年度当初予算は574百万円(前年度612百万円)、これに令和7年度補正予算4,000百万円加わります。
農林水産省の資料に載っている「事業の流れ」は、国 → 都道府県 → 市町村等/民間団体いう形で、補助率は定額または1/2以内(一部は委託)です。

つまり入口が自治体や協議会にあるのが基本設計です。
農家が市役所へ行って「みどりの交付金を申請したい」と言っても、該当するメニューがなければ受け付けられません。
まずは下の表で、自分が当事者になれるものがあるかを見てください。

メニュー主に申請するのは個人で使えるか
グリーンな生産体系加速化事業協議会×
省エネルギー型ハウス転換事業協議会×
農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業協議会×
地域循環型エネルギーシステム構築協議会×
環境負荷低減活動定着サポート都道府県
農林漁業を核とした循環経済先導地域づくり都道府県・市町村×
有機農業拠点創出・拡大加速化事業(オーガニックビレッジ)市町村
先進的有機農業拡大促進事業農業者等
有機転換推進事業農業者
みどりの事業活動を支える体制整備事業者×
バイオマスの地産地消事業者等×

◎=農業者が直接の交付先になりうる/△=自治体の事業だが農業者が恩恵を受ける/ ×=協議会や事業者が主体で、個人では申請しない、という意味です。

⭐① 有機転換推進事業=10アールあたり2万円以内

慣行農業から有機農業へ切り替える初年度に、面積に応じて交付される事業です。
有機種苗の購入、土づくり、病害虫が発生しにくいほ場環境の整備といった、有機を始めるのに必要な経費の相当額支援の名目になっています。

項目内容
単価10aあたり2万円以内
対象者ア 有機農業に取り組む新規就農者(就農後3年以内)/ イ 慣行農業から有機農業への転換に取り組む農業者
対象農地慣行農業から有機農業への転換初年度となる農地
要件将来的に国際水準の有機農業に取り組む/みどり認定を受けている、 または受ける予定がある/⚠️新規就農者の場合は地域の国際水準の有機農業の 平均的な収量とおおむね同等以上の収量実績があること
⚠️⚠️ これまでにこの事業の支援を受けていない人に限られます。毎年もらえるものではありません。

⚠️⚠️ 農林水産省の資料に「予算の範囲内で交付金を交付する仕組みです。
申請額の合計が予算額を上回った場合、交付金が減額されることがあります」
明記されています。
単価が決まっていても満額は保証されません

⚠️ 交付の流れは国→都道府県→市町村・協議会→農業者です。
窓口は市町村または地域の協議会なります。

1ヘクタール(100a)を転換すれば20万円という規模感です。
金額だけ見れば大きくありませんが、転換初年度は収量が落ちるうえ、有機の表示もまだできないいういちばん苦しい時期に当たるお金です。
農林水産省の資料も、その時期の課題(生産コストの増加・収量の低下・転換初年度は有機表示できない)を並べたうえでこの事業を置いています。

⭐② 先進的有機農業拡大促進事業=スマート農機で有機を広げる

すでに有機に取り組んでいて、面積を広げたい向けのメニューです。
補助率は定額または1/2以内
令和7年度補正予算4,000百万円の内数で動きます。

  • 機械等の導入=自動走行農機、高能率水田除草機・抑草ロボット専用保管設備、スマート選別機など
  • 有機農業の拡大に向けた取組=ほ場での試験栽培、専用保管設備等の活用による流通体制の効率化、有機加工品の開発等を通じた販路拡大
⚠️ 支援要件は3つで、すべてを満たす必要があります

① スマート農業技術等の導入により有機農業の生産拡大に取り組むこと
地域計画に位置付けられた農業者等であること
みどり認定を受けている、又は申請を行っていること

除草の機械が名指しで入っているのがこの事業の性格をよく表しています。
有機で面積を増やすときにいちばん効くのは除草の省力化だ、という前提で組まれています。
水田で有機を広げたい人は、まずここを見る価値があります。

🔑 どちらも入口は「みどり認定」

上の2つに共通する条件がみどり認定です。
みどりの食料システム法にもとづき、化学農薬・化学肥料の使用低減など環境負荷を減らす計画をつくって、都道府県知事の認定を受けます。

認定は交付金の入口であると同時に、それ自体に特典があります。農林水産省の資料では、みどり認定農業者向けの支援策としてみどり投資促進税制と、改良資金等の特例(無利子、償還期間の延長等)挙げられています。
交付金に落ちたとしても、認定を取っておく意味はあります。

⭐ 令和8年度は、都道府県が「みどりトータルサポートチーム」つくる事業(環境負荷低減活動定着サポート)が動いています。
自治体・関係事業者・専門家で構成し、みどり認定農業者の生産から販売、経営までの課題解決をワンストップで受ける体制です。
堆肥などの資材調達先とのマッチングや、小売・流通・加工事業者とのマッチングもメニューに入っています。
⚠️体制が県によってどこまでできているかは差があるので、まず県の環境保全型農業の担当課に「サポートチームはありますか」と聞いてみてください。

交付金が出るのは初年度。
続くかどうかは毎年の資材費で決まる

有機転換推進事業は転換初年度の農地にしか出ません
1回きりです。
2年目以降にかかる肥料や資材の費用は、自分で見ることになります。

農林水産省が示す有機転換の課題も「生産コストの増加」「収量の低下」「転換初年度は有機表示できない」の3つでした。
交付金が手当てするのは1つ目の一部だけで、 2年目からのコストは制度の外にあります。

自分では申請しないが、恩恵が回ってくるメニュー

表で△にしたものと、協議会が主体のメニューです。
自分で申請書を書くことはありませんが、地域の取組に乗ると使えます。

  • 有機農業拠点創出・拡大加速化事業(オーガニックビレッジ)=生産から消費まで一貫して有機農業を推進する拠点づくりを市町村が行うもの。
    自分の市町村が手を挙げていれば、研修や販路づくりに参加できます
  • グリーンな生産体系加速化事業=地域の関係者が集まった協議会に対し、化学農薬・化学肥料の使用量低減、高温等の気候変動への適応アミノ酸バランス改善飼料の導入、先端技術による省力化などの技術実証を支援
  • 省エネルギー型ハウス転換事業=収量・品質を落とさずにエネルギー投入量を減らせる施設園芸の栽培体系への転換
  • 農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業=農業由来廃プラスチックの新たなリサイクル技術等
  • 地域循環型エネルギーシステム構築=営農型太陽光発電、次世代型太陽電池(ペロブスカイト)のモデル的取組

⚠️これらはいずれも協議会が事業主体です。
「うちの地域でやっていないか」を市町村やJAに聞くのが正しい入り方になります。

申請するときの注意点

  1. 🔴まず「自分が交付先になれるメニューか」を確かめる。この交付金でいちばん多い勘違いがここです。
    協議会向けのメニューを個人で調べても、申請の入口がありません
  2. 🔴みどり認定は先に動く。2つの農業者向けメニューは、どちらも認定を受けているか、受ける予定・申請中であることが要件です。
    計画づくりに時間がかかるので、公募が出てから動くと間に合いません
  3. ⚠️有機転換推進事業は「転換初年度の農地」だけ。すでに有機で作っている農地や、2年目以降の面積は対象外です
  4. ⚠️単価が決まっていても満額とは限らない。申請が予算を上回ると減額されると国が明記しています
  5. ⚠️窓口は市町村・協議会・都道府県。国に直接申請するものではありません。
    まず市町村の農政担当に相談してください

まとめ

  • 交付金の大半は都道府県・市町村・協議会申請するもの。
    個人が直接使えるのは実質2つ
  • 有機転換推進事業=転換初年度の農地に10aあたり2万円以内。
    ⚠️1回限り・予算超過で減額あり
  • 先進的有機農業拡大促進事業=有機拡大のスマート農機等に定額・1/2以内。
    ⭐高能率水田除草機・抑草ロボットが名指しで対象
  • 🔑 どちらもみどり認定入口。
    認定自体にみどり投資促進税制や資金の特例という別の価値もある
  • 有機でなくても、化学農薬・化学肥料の低減の計画でみどり認定は受けられる。
    県のみどりトータルサポートチーム相談する道がある

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みどりの食料システム戦略推進交付金の詳細あわせてご覧ください。
有機での就農を考えている方は有機・自然栽培で就農する補助金に、市町村ごとの有機JAS認証の取得支援をまとめています。