広島県の農業補助金には、他県とはっきり違う特徴があります。
当サイトが掲載している31件は、すべて「市」が単独で出している制度で、県が農業者個人に直接出す単独補助は確認できませんでした。

つまり広島では、使える制度があるかどうかが「どの市に住んでいるか」でほぼ決まります。県のサイトを一生懸命に読んでも、農家個人が申請できる金額つきのメニューは出てきません。
この記事では、市ごとの制度を金額つきで整理します。
31件を一覧で見たい方は広島県の補助金一覧からどうぞ。

広島の補助金は「県」ではなく「市」で決まる

掲載31件の内訳です。
6つの市に集中しています。

件数性格
三次市13件品目・規模別にきめ細かい。小規模層も拾う
東広島市7件金額がいちばん大きい(最大1,600万円)
呉市4件鳥獣対策に集中。少額で申請しやすい
尾道市4件1つの事業に5メニューを統合。年3回の審査制
福山市2件⭐認定農業者でなくても使える
広島市1件後継者の継承支援に特化
⚠️ この件数は当サイトの調査状況を反映した数字です。
広島県には23の市町があり、未調査の市町にも制度がある可能性は十分あります。
件数の順位を「手厚さの順位」と読まないでください。お住まいの市が表にない場合も、農政担当課に直接問い合わせる価値があります。

三次市(13件)=小規模農家を名指しで拾う

県内でもっとも制度が多い市です。
特徴は、「大きい農家向け」で終わらせず、規模の小さい層に別枠を用意している点にあります。

⭐小規模水稲は「小さいから対象」

小規模水稲生産者機械購入支援事業は、管理農地が30アール以上5ヘクタール未満農家を対象に、トラクター・田植機・コンバインの購入費を1/10・上限30万円で補助します。
補助率は高くありませんが、規模要件で弾かれることの多い層に正面から出している制度です。

⚠️ ただし3年以内に規模を拡大する計画が必要です。
新たな利用権設定で10%以上、自己所有地の拡大を含めて20%以上、自己所有農地のみなら50%以上、のいずれかを満たす計画を出します。
完了の翌年度から3年間、毎年度の実績報告も要ります。

草刈りと水管理を機械に任せる

  • ラジコン草刈機・法面草刈機導入支援=ラジコン草刈機が1/3・上限50万円(管理農地3ヘクタール以上)。
    法面草刈機なら30アール以上から使えます(1/5・上限5万円)。
    認定農業者・認定新規就農者は2台まで
  • 水田用自動給水機=1/5・1台1万円。
    一般は3台まで、認定農業者・認定新規就農者は10台まで
    水の回りが減るので、勤めを持ちながら米を作っている人ほど効きます

産地づくりは品目を指定して2/3・300万円

三次市は品目を名指しで支援します
果樹・花き生産振興支援事業(ぶどう・なし・りんご・菊)と振興作物産地化推進支援事業(白ねぎ・ほうれんそう・アスパラガス)は、どちらも植栽条件整備が認定農業者・認定新規就農者なら2/3・上限300万円(それ以外は1/2・上限100万円)、機械購入が1/2・上限100万円です。

果樹・花きのほうには害鳥被害防止レーザー装置(設置式)が1/2・上限100万円いう枠があります。
レーザーによる鳥害対策に補助を出す自治体は多くありません。
自動草刈りロボット(1/2・20万円)とあわせて、スマート農業推進の枠だけは規模拡大の要件が不要です。

⚠️ 機械等購入支援は申請が1回限りで、次年度以降は対象外になります。
また申請期限は例年10月末
着手前の現況写真が必要なので早めに動いてください。

新規就農・継承

  • 認定新規就農者育成支援事業=施設・植栽条件整備2/3・上限300万円、機械導入2/3・上限200万円。
    栽培技術の習得にも20万円。
    ⚠️年齢が原則45歳未満と、国の要件(原則49歳以下)より厳しい点に注意。
    3親等以内の親族から継承する人も対象ですが、その場合の機械は1/2・上限100万円に下がります
  • 経営継承促進事業=⭐血縁関係のない第三者から引き継ぐ人に特化した制度。
    引き継いだ古い施設・設備の改修や、果樹の改植に1/2・上限100万円
  • 農地集積支援事業=⭐農地を「借りる側」に出ます
    9年以上の賃貸借の設定で 10アールあたり2万円(上限100万円)。
    1ヘクタール借りれば20万円になります

畜産はヘルパーの利用料に出る

機械や施設ではなく「休むための費用」出しているのが三次市の特徴です。
酪農ヘルパー肉用牛ヘルパー利用料をそれぞれ1/2補助します。
肉用牛のほうは市場出荷の代行業務も対象です。
⚠️ ただし傷病等で連続利用した場合、酪農は4日目以降・肉用牛は8日目以降が1/4に下がり、30日が限度です。

肥育和牛導入支援三次産の黒毛和牛素牛1頭あたり10万円。
⚠️市外産の素牛は対象外で、母牛・父牛の血統要件もあります。

広島市(7件)=金額がいちばん大きい

件数では三次市に譲りますが、1件あたりの金額は県内最大です。

  • 新規園芸就農者経営基盤強化促進事業2/3・上限1,600万円
    園芸で新規就農する人の経営基盤(ハウス等)が対象で、市単独の新規就農支援としては全国トップ級です。
    三次市の同種メニュー(300万円)と比べても5倍以上の開きがあります
  • 農福連携推進事業=障害者就労施設等に農作業を委託した費用を3/4相当以内・上限100万円
    補助率の高さが目を引きます
  • 意欲ある農業者チャレンジ支援事業=1/2・上限100万円。
    使いみちが「創意工夫のある取組」と広く有機農業者や地域グループ営農団体も対象です(審査採択制)
  • 地力増進支援事業=堆肥代・運搬費が1/2以内。
    一般1,500円/t・上限20万円に対し、認定農業者等は3,500円/t・上限50万円倍以上の差。
    ⚠️散布料は対象外、投入面積10a以上、購入前の申請が必須
  • 新規就農者初期投資支援事業=⭐農地の所有・借受から1年未満人の耕作放棄地再生費用に最大10万円。
    少額ですが随時受付で手続きが軽いのが利点です
  • 農地区画拡大支援事業=畦畔除去5,000円/10m、均平整地10,000円/1,000㎡の定額。
    ⚠️施工後の1区画が10a以上になることが条件
  • 環境制御装置導入支援=ハウスの環境制御装置に1/2・上限100万円

呉市(4件)=鳥獣対策に全振り

呉市は4件のうち3件が鳥獣対策で、しかも柵・わな・免許の3方向がそろっています

  • 狩猟免許取得支援実費(10/10)
    初心者講習会受講料7,200円と免許申請手数料5,200円(種別追加は3,900円)が戻ります。
    ⚠️免許が交付された年度内に申請しないと使えません
  • 箱わな購入支援=1/2以内・1基5万円まで(年度内1世帯1基)。
    柵ではなく捕獲側の道具に出る補助は数が少ない制度です
  • 有害鳥獣対策事業(防護さく)=資材費の1/3以内・年6万円まで。
    破損した柵の部分補修にも使えます(補修前の写真が必要)。
    ⚠️設置工事費・運送費・カット代は対象外、支柱だけ・結束線だけの購入も不可
  • 環境配慮型農業推進事業=堆肥購入費の1/2以内または1トン2,500円の低いほう。
    ⚠️1アールあたり1トン以上の投入が必要で、薄まきでは要件を満たしません

尾道市(4件)=5メニューが1つの事業に統合されている

尾道市の制度は「おのみち『農』の担い手総合支援事業」という1つの事業にメニューが束ねられているのが特徴です。
申請先も受付時期も共通なので、まとめて検討できます。

  • 新規就農者経営安定支援事業=認定就農者のパイプハウス・機械に1/2・上限100万円(事業費15万円以上が下限)
  • 農業経営高度化支援事業=3タイプ各3/10・上限200万円。
    生産基盤整備は自力施工でも対象で、機械借上料・原材料・燃料費が出ます
  • 産地構造改革支援事業=3/10・上限500万円。
    ⚠️認定農業者(個人)が実施主体だと受益農家3戸以上が必要で、1戸では使えません
  • 遊休農地再生利用支援事業=再生作業に10aあたり5万円(限度20万円)。
    申請書1枚・随時受付手続きが軽く、再生後の作付にも上乗せ(尾道ブランド農産物なら10aあたり2万円以内)があります
⚠️ 遊休農地再生以外の3メニューは年3回(例年4/20〜5/20・7月・9月)の受付で、認定審査会の審査を経た採択制です。
申請すれば通るわけではなく、上位のものから予算の範囲内で決まります。
第2期以降は予算が残っている場合のみ実施されます。

福山市・広島市

⭐福山市の農業用機械・施設整備支援事業は、この記事でいちばん入口が広い制度かもしれません。
認定農業者の資格が不要で、市長が認める農業研修の修了者、または産直市出荷者団体の会員であれば1/2・上限30万円が使えます。
⚠️申請前に農業振興課への事前相談が必要です。

6次産業化推進・設備整備等事業補助率2/3で、GAP・有機JAS・HACCPの認証取得費まで対象なります(認証取得のみなら上限40万円)。
備後圏域事業なら上限100万円です。

広島市の農業継承円滑化支援事業は、国の経営開始資金の対象外になる後継者狙いです。
給付金が初年度100万円+2年目以降100万円/年(最大5年)に加え、ハウス・トラクター等の整備が1/2・上限100万円。
⚠️市内で20年以上農業を継続できる見込みが条件です。

広島で申請するときの注意点

① 交付決定の前に買わない

全市に共通します。
呉市の堆肥は「交付決定通知日より前に購入した堆肥は対象外」、箱わなは「必ず事前に申請書を提出し、交付決定通知を受けてから購入する」、尾道市も「契約は交付決定後。
先に発注すると対象外」と明記しています。
広島市の初期投資支援も同様です。

② 締切が市ごとにバラバラ

市・制度時期
三次市(果樹花き・振興作物・6次産品化)例年10月末
三次市(その他の多く)随時(予算の範囲内)
尾道市(遊休農地再生以外)年3回・審査採択制
尾道市(遊休農地再生)随時
呉市(堆肥)例年6月上旬〜翌年2月下旬
呉市(狩猟免許)免許交付の年度内
東広島市(初期投資支援)令和9年2月末まで随時

③ 認定を取ると金額が変わる

広島の制度は認定農業者・認定新規就農者かどうかで上限が跳ねます
三次市の産地づくりは1/2・100万円が2/3・300万円へ、東広島市の堆肥は上限20万円が50万円へ、三次市の自動給水機は3台までが10台までになります。
まだ認定を取っていない方は認定農業者とは?先に読んでおくと、選べる制度の幅が変わります。

④ 市税の完納はほぼ全制度の共通条件

三次市は「世帯員全員(法人は当該法人)の市税等の完納」、東広島市・呉市も市税の滞納がないことを条件にしています。
滞納がある状態では、他の要件を満たしていても申請できません。

まとめ:まず自分の市の農政課を見る

広島は県ではなく市で決まるです。
県のページを探しても農家個人向けの金額は出てきません。

  • 三次市=品目・規模別にきめ細かい。
    小規模水稲や第三者継承の受け皿もある
  • 広島市=園芸で新規就農するなら2/3・1,600万円が射程に入る
  • 呉市=鳥獣被害に困っているなら、柵・わな・免許の3方向がそろう
  • 尾道市=メニューが1本化されている。
    ただし年3回の審査採択制
  • 福山市=認定農業者でなくても使える数少ない制度

お住まいの市が上に出てこない場合でも、制度が無いとは限りません。
まず市の農政担当課に「農業者が使える市単独の補助制度はありますか」と直接聞いてみてください。
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