広島県の農業補助金には、他県とはっきり違う特徴があります。
当サイトが掲載している36件のうち32件は「市」が単独で出している制度で、県の制度は4つしかありません。
しかもその4つは、団体や産地を単位にしたものが中心です。

つまり広島では、個人で使える制度があるかどうかが「どの市に住んでいるか」でほぼ決まります。ただし県の制度にも見逃せないものがあります。
園芸用施設・設備導入等支援事業(1/2・上限3,000万円)は、面積要件で国の産地生産基盤パワーアップ事業に乗れなかった認定農業者を拾う設計で、金額は県内最大です。
この記事では、県と市それぞれの制度を金額つきで整理します。
36件を一覧で見たい方は広島県の補助金一覧からどうぞ。

広島の補助金は「県」ではなく「市」で決まる

掲載36件の内訳です。
県の4件を除くと、6つの市に集中しています。

市件数性格
広島県(県単独)4件⭐金額は最大(上限3,000万円)。ただし団体・産地向けが中心
三次市13件品目・規模別にきめ細かい。小規模層も拾う
東広島市7件金額がいちばん大きい(最大1,600万円)
呉市4件鳥獣対策に集中。少額で申請しやすい
尾道市5件1つの事業に5メニューを統合。年3回の審査制
福山市2件⭐認定農業者でなくても使える
広島市1件後継者の継承支援に特化
⚠️ この件数は当サイトの調査状況を反映した数字です。
広島県には23の市町があり、未調査の市町にも制度がある可能性は十分あります。
件数の順位を「手厚さの順位」と読まないでください。お住まいの市が表にない場合も、農政担当課に直接問い合わせる価値があります。

広島県の県単独事業(4件)=金額は最大、ただし多くは団体向け

県の制度は数こそ少ないものの、金額の桁が市とは違います。
いちばん大きいのが園芸用施設・設備導入等支援事業で、ハウスの新設・改修・省エネ加温機器の導入を1/2以内・上限3,000万円で支援します。
⭐対象は「面積要件等により産地生産基盤パワーアップ事業等の国庫事業の対象外となっている」認定農業者・認定新規就農者。
国庫事業に規模が届かず断られた人を、県が拾う設計です。
⚠️窓口は県ではなく市町で、市町の予算措置が前提になります。
まず市町の農政担当に相談してください。

ひろしま型スマート農業普及支援事業は1地区400万円まで。
⚠️個人では申請できず、複数経営体の農業者グループか生産部会が事業実施主体です。
⭐リース・レンタル費が定額補助なので、高額な機械を買わずに試せます。

畜産なら配合飼料価格安定制度生産者負担金支援事業が効きます。
⭐県が「必要な手続き不要」と明記している珍しい制度で、配合飼料価格安定制度に加入していれば、400円/t以内×契約数量が加入先の実施主体から振り込まれます。
個人がそのまま恩恵を受けられる県の制度は、実質これだけです。

他業種の企業と組んで新しい食のビジネスを立ち上げるならHiroshima FOOD BATON(上限250万円・最長3年)があります。
⚠️採択は年3チームだけなので、難易度は最高クラスです。

三次市(13件)=小規模農家を名指しで拾う市

県内でもっとも制度が多い市です。
特徴は、「大きい農家向け」で終わらせず、規模の小さい層に別枠を用意している点にあります。

⭐小規模水稲は「小さいから対象」

小規模水稲生産者機械購入支援事業は、管理農地が30アール以上5ヘクタール未満の農家を対象に、トラクター・田植機・コンバインの購入費を1/10・上限30万円で補助します。
補助率は高くありませんが、規模要件で弾かれることの多い層に正面から出している制度です。

⚠️ ただし3年以内に規模を拡大する計画が必要です。
新たな利用権設定で10%以上、自己所有地の拡大を含めて20%以上、自己所有農地のみなら50%以上、のいずれかを満たす計画を出します。
完了の翌年度から3年間、毎年度の実績報告も要ります。

草刈りと水管理を機械に任せる

  • ラジコン草刈機・法面草刈機導入支援=ラジコン草刈機が1/3・上限50万円(管理農地3ヘクタール以上)。
    法面草刈機なら30アール以上から使えます(1/5・上限5万円)。
    認定農業者・認定新規就農者は2台まで
  • 水田用自動給水機=1/5・1台1万円。
    一般は3台まで、認定農業者・認定新規就農者は10台まで。
    水の見回りが減るので、勤めを持ちながら米を作っている人ほど効きます

産地づくりは品目を指定して2/3・300万円

三次市は品目を名指しで支援します。
果樹・花き生産振興支援事業(ぶどう・なし・りんご・菊)と振興作物産地化推進支援事業(白ねぎ・ほうれんそう・アスパラガス)は、どちらも植栽条件整備が認定農業者・認定新規就農者なら2/3・上限300万円(それ以外は1/2・上限100万円)、機械購入が1/2・上限100万円です。

果樹・花きのほうには⭐害鳥被害防止レーザー装置(設置式)が1/2・上限100万円という枠があります。
レーザーによる鳥害対策に補助を出す自治体は多くありません。
自動草刈りロボット(1/2・20万円)とあわせて、スマート農業推進の枠だけは規模拡大の要件が不要です。

⚠️ 機械等購入支援は申請が1回限りで、次年度以降は対象外になります。
また申請期限は例年10月末。
着手前の現況写真が必要なので早めに動いてください。

新規就農・継承

  • 認定新規就農者育成支援事業=施設・植栽条件整備2/3・上限300万円、機械導入2/3・上限200万円。
    栽培技術の習得にも20万円。
    ⚠️年齢が原則45歳未満と、国の要件(原則49歳以下)より厳しい点に注意。
    3親等以内の親族から継承する人も対象ですが、その場合の機械は1/2・上限100万円に下がります
  • 経営継承促進事業=⭐血縁関係のない第三者から引き継ぐ人に特化した制度。
    引き継いだ古い施設・設備の改修や、果樹の改植に1/2・上限100万円
  • 農地集積支援事業=⭐農地を「借りる側」に出ます。
    9年以上の賃貸借の設定で 10アールあたり2万円(上限100万円)。
    1ヘクタール借りれば20万円になります

畜産はヘルパーの利用料に出る

機械や施設ではなく「休むための費用」に出しているのが三次市の特徴です。
酪農ヘルパーと肉用牛ヘルパーの利用料をそれぞれ1/2補助します。
肉用牛のほうは ⭐市場出荷の代行業務も対象です。
⚠️ ただし傷病等で連続利用した場合、酪農は4日目以降・肉用牛は8日目以降が1/4に下がり、30日が限度です。

肥育和牛導入支援は三次産の黒毛和牛素牛1頭あたり10万円。
⚠️市外産の素牛は対象外で、母牛・父牛の血統要件もあります。

東広島市(7件)=金額がいちばん大きい

件数では三次市に譲りますが、1件あたりの金額は県内最大です。

  • ⭐新規園芸就農者経営基盤強化促進事業=2/3・上限1,600万円。
    園芸で新規就農する人の経営基盤(ハウス等)が対象で、市単独の新規就農支援としては全国トップ級です。
    三次市の同種メニュー(300万円)と比べても5倍以上の開きがあります
  • 農福連携推進事業=障害者就労施設等に農作業を委託した費用を3/4相当以内・上限100万円。
    補助率の高さが目を引きます
  • 意欲ある農業者チャレンジ支援事業=1/2・上限100万円。
    ⭐使いみちが「創意工夫のある取組」と広く、有機農業者や地域グループ営農団体も対象です(審査採択制)
  • 地力増進支援事業=堆肥代・運搬費が1/2以内。
    一般1,500円/t・上限20万円に対し、認定農業者等は3,500円/t・上限50万円と倍以上の差。
    ⚠️散布料は対象外、投入面積10a以上、購入前の申請が必須
  • 新規就農者初期投資支援事業=⭐農地の所有・借受から1年未満の人の耕作放棄地再生費用に最大10万円。
    少額ですが随時受付で手続きが軽いのが利点です
  • 農地区画拡大支援事業=畦畔除去5,000円/10m、均平整地10,000円/1,000㎡の定額。
    ⚠️施工後の1区画が10a以上になることが条件
  • 環境制御装置導入支援=ハウスの環境制御装置に1/2・上限100万円

呉市(4件)=鳥獣対策に全振り

呉市は4件のうち3件が鳥獣対策で、しかも柵・わな・免許の3方向がそろっています。

  • ⭐狩猟免許取得支援=実費(10/10)。
    初心者講習会受講料7,200円と免許申請手数料5,200円(種別追加は3,900円)が戻ります。
    ⚠️免許が交付された年度内に申請しないと使えません
  • 箱わな購入支援=1/2以内・1基5万円まで(年度内1世帯1基)。
    柵ではなく捕獲側の道具に出る補助は数が少ない制度です
  • 有害鳥獣対策事業(防護さく)=資材費の1/3以内・年6万円まで。
    ⭐破損した柵の部分補修にも使えます(補修前の写真が必要)。
    ⚠️設置工事費・運送費・カット代は対象外、支柱だけ・結束線だけの購入も不可
  • 環境配慮型農業推進事業=堆肥購入費の1/2以内または1トン2,500円の低いほう。
    ⚠️1アールあたり1トン以上の投入が必要で、薄まきでは要件を満たしません

⚠️柵と罠の補助は出ても、「どこから入られているか」を突き止める費用には出ません。獣道の見当が外れたまま柵を張ると、迂回されて同じ被害が続きます。
電気の来ていない山際の圃場でも、電源確保が難しい場所での監視にエコパワーカメラ【監視カメラレンタル】[広告]のようなレンタルなら、柵を張る前の1シーズンだけ様子を見るという使い方ができます。
⚠️自治体によっては監視機器そのものが鳥獣対策の補助対象になる場合があるので、先に窓口へ確認してください。

尾道市(5件)=5メニューが1つの事業に統合されている

尾道市の制度は「おのみち『農』の担い手総合支援事業」という1つの事業にメニューが束ねられているのが特徴です。
申請先も受付時期も共通なので、まとめて検討できます。
当サイトは5メニューすべてを掲載しています。

  • 地域農業活性化支援事業=1/2・上限20万円(農業者活動支援)/上限100万円(地域戦略組織支援・栽培技術等構築支援)。
    🔴このメニューだけは個人では申請できず、規約のある農業者の団体が申請者になります。
    機械ではなく謝金・会議費・視察研修費・展示圃設置費といった活動費に出るのが他と違う点です
  • 新規就農者経営安定支援事業=認定就農者のパイプハウス・機械に1/2・上限100万円(事業費15万円以上が下限)
  • 農業経営高度化支援事業=3タイプ各3/10・上限200万円。
    ⭐生産基盤整備は自力施工でも対象で、機械借上料・原材料・燃料費が出ます
  • 産地構造改革支援事業=3/10・上限500万円。
    ⚠️認定農業者(個人)が実施主体だと受益農家3戸以上が必要で、1戸では使えません
  • ⭐遊休農地再生利用支援事業=再生作業に10aあたり5万円(限度20万円)。
    申請書1枚・随時受付と手続きが軽く、再生後の作付にも上乗せ(尾道ブランド農産物なら10aあたり2万円以内)があります
⚠️ 遊休農地再生以外の3メニューは年3回(例年4/20〜5/20・7月・9月)の受付で、認定審査会の審査を経た採択制です。
申請すれば通るわけではなく、上位のものから予算の範囲内で決まります。
第2期以降は予算が残っている場合のみ実施されます。

福山市・広島市

⭐福山市の農業用機械・施設整備支援事業は、この記事でいちばん入口が広い制度かもしれません。
認定農業者の資格が不要で、市長が認める農業研修の修了者、または産直市出荷者団体の会員であれば1/2・上限30万円が使えます。
⚠️申請前に農業振興課への事前相談が必要です。

6次産業化推進・設備整備等事業は補助率2/3で、⭐GAP・有機JAS・HACCPの認証取得費まで対象になります(認証取得のみなら上限40万円)。
備後圏域事業なら上限100万円です。

広島市の農業継承円滑化支援事業は、⭐国の経営開始資金の対象外になる後継者が狙いです。
給付金が初年度100万円+2年目以降100万円/年(最大5年)に加え、ハウス・トラクター等の整備が1/2・上限100万円。
⚠️市内で20年以上農業を継続できる見込みが条件です。

広島で申請するときの注意点

① 交付決定の前に買わない

全市に共通します。
呉市の堆肥は「交付決定通知日より前に購入した堆肥は対象外」、箱わなは「必ず事前に申請書を提出し、交付決定通知を受けてから購入する」、尾道市も「契約は交付決定後。
先に発注すると対象外」と明記しています。
東広島市の初期投資支援も同様です。

② 締切が市ごとにバラバラ

市・制度時期
三次市(果樹花き・振興作物・6次産品化)例年10月末
三次市(その他の多く)随時(予算の範囲内)
尾道市(遊休農地再生以外)年3回・審査採択制
尾道市(遊休農地再生)随時
呉市(堆肥)例年6月上旬〜翌年2月下旬
呉市(狩猟免許)免許交付の年度内
東広島市(初期投資支援)令和9年2月末まで随時

③ 認定を取ると金額が変わる

広島の制度は認定農業者・認定新規就農者かどうかで上限が跳ねます。
三次市の産地づくりは1/2・100万円が2/3・300万円へ、東広島市の堆肥は上限20万円が50万円へ、三次市の自動給水機は3台までが10台までになります。
まだ認定を取っていない方は認定農業者とは?を先に読んでおくと、選べる制度の幅が変わります。

④ 市税の完納はほぼ全制度の共通条件

三次市は「世帯員全員(法人は当該法人)の市税等の完納」、東広島市・呉市も市税の滞納がないことを条件にしています。
滞納がある状態では、他の要件を満たしていても申請できません。

まとめ:まず自分の市の農政課を見る

広島は県ではなく市で決まる県です。
県のページを探しても農家個人向けの金額は出てきません。

  • 三次市=品目・規模別にきめ細かい。
    小規模水稲や第三者継承の受け皿もある
  • 東広島市=園芸で新規就農するなら2/3・1,600万円が射程に入る
  • 呉市=鳥獣被害に困っているなら、柵・わな・免許の3方向がそろう
  • 尾道市=メニューが1本化されている。
    ただし年3回の審査採択制。
    個人で使うなら地域農業活性化支援事業以外の4メニュー
  • 福山市=認定農業者でなくても使える数少ない制度

お住まいの市が上に出てこない場合でも、制度が無いとは限りません。
まず市の農政担当課に「農業者が使える市単独の補助制度はありますか」と直接聞いてみてください。
掲載中の制度は広島県のページかみのり補助金ナビの検索から条件を絞って探せます。