福井県の農業補助金を18件並べると、制度の名前だけで性格が分かります。
「小さな農業応援事業」「小規模農業者チャレンジ応援事業」「小規模園芸施設整備事業」。
多くの県は、補助を出す代わりに大きくなることを求めます。
産地要件(露地3ha以上)、認定農業者であること、生産性を10%以上向上させる目標、規模拡大の実績——。
福井は、そこを条件にしません。
もう1つ、はっきりした特徴があります。
就農を決める前から補助が出ることです。
福井市は就農先の見学・就農体験に来るときの交通費と宿泊費を補助し、まだ就農を決めていなくても使えます。
県のインターンシップ支援も対象は「就農希望者」=決める前の人です。
小さく、手前から。これが福井の設計です。
この記事では掲載18件を出し手ごとに金額つきで整理します。
一覧で見たい方は福井県の補助金一覧からどうぞ。
福井の内訳
⚠️ この件数は当サイトの調査状況を反映した数字です。
福井県には17の市町があり、表に出ていない市町にも制度がある可能性は十分あります。
件数の順位を「手厚さの順位」と読まないでください。
🥇県の7件:小規模と「お試し」に寄せている
⭐⭐福井県 小さな農業応援事業費補助金が象徴です。
対象が小規模農家・生産者・営農集団で、大規模な産地形成を求められません。
補助率1/2、上限は個人120万円・集団240万円。
⭐そしてこの制度は県費のみで、市町の負担がありません。
これは実務上とても大きな違いです。
同じ「県の補助金」でも、住んでいる市町次第で使えたり使えなかったりする県は珍しくありません。福井の小さな農業応援は、そこを外してあります(⚠️ただし申請窓口は市町の農業担当課なので、相談先は市町です)。
メニューは3つに分かれています。
- ①「ちょい足し」支援=販売額が現状から20%以上増、または20万円以上増える計画が要件
- ②自然災害支援=園芸ハウスが被災し罹災証明を受けた生産者向け。
被害前の栽培面積までの復旧が対象 - ③「まるっと」猛暑対策=施設園芸は ⚠️遮光/遮熱・換気/冷房・かん水をすべて実施することが条件(露地はかん水対策)
⚠️同種・同能力の単純な更新は対象外、 ⚠️猛暑対策は過去に同事業の補助を受けていないことが条件です。
「20万円以上増える計画」というのは、小さな農業に合わせた現実的な水準です。
⭐福井県 小規模農業者チャレンジ応援事業は女性農業者や小規模農業者の新しい挑戦が対象で、新商品開発・未栽培作物・新技術のほか ⭐農機具の改修も入っています。
補助率2/3〜3/4以内・上限30万〜150万円。
大規模効率化ではなく多様性の確保に焦点を当てた設計です。
⭐福井県 お試しKnow(農)福事業補助金は農福連携を初めて試すときの、福祉事業所への作業委託費・農作業体験費・小農具購入費が10/10(定額)・上限10万円。
「まず試す」段階を全額で支える形です。
⭐福井県 農業インターンシップ研修生確保促進事業は対象が就農希望者=就農を決める前の段階から参加経費が1/2。
県単独の小規模事業で、予算規模は年約34万円と小さいものです。
本格的に学ぶならふくい園芸カレッジ(新規就農コース)。
野菜・果樹・花きの栽培技術、経営分析、農業簿記、ネット販売まで体系的に学べ、農業機械の操作・大型特殊運転・ハウス建設の実習もつきます。
⭐修了後は県が整備した圃場で実践規模の栽培をしながら収入を得て就農準備ができます(最大4年間)。
✅研修期間中は要件を満たせば国の就農準備資金(年165万円)の対象になり得ます。
給付金は福井県 新規就農者支援事業に県単独のセットがあり、①新規就農者支援補助金(1/4・1/2・定額/認定就農者向け・市町経由) ②研修奨励金(定額/就農希望者向け)③県単就農給付金(準備型・定額/国の準備資金と別枠)の3本立て。
国の制度と組み合わせられるか、市町・県に確認する価値があります。
設備では福井県 スマートエコ園芸推進事業が省エネ設備等の導入に1/2または1/3。
燃料費の高い北陸のハウス経営で、ランニングコストを下げる投資に使えます。
⚠️対象は農業法人等で、令和8年度から名称変更された事業なので最新の要領を県に確認してください。
⭐⭐福井市・坂井市:決める前と、50代の受け皿
⭐⭐福井市 農のU・Iターン促進補助金は、就農先の見学や就農体験に来るときの交通費・宿泊費が出ます。
交通費は居住地ごとに定額、宿泊費は1泊5,000円(上限)。
✅まだ就農を決めていなくても使えます。
これは全国的にも珍しい制度です。就農の補助金はふつう「就農する人」に出ますが、その手前には「見に行く旅費が出せない」という壁があります。
福井市はそこに出しています。
⚠️福井県外に住む60歳未満の人、または福井市での就業を希望している人が対象で、 ⚠️人数枠があるため早めに農林水産部へ相談してください。
実際に来たあとは福井市 U・Iターン者就農奨励金が30万円/年・最長2年間(世帯で移住し林業に就業した場合は45万円/年)。
⭐就農時60歳未満が対象で、 ⭐農業法人等への雇用就農でも対象(正規雇用かつ雇用保険加入が要件)。
国の「49歳以下」と「独立自営就農が原則」という2つの壁を同時に回避できます。⚠️申請期限が証明書等の発行日から3か月以内と短いので、就農・研修開始が決まったらすぐ動いてください。
⭐⭐坂井市 新規就農サポート事業は就農時50歳以上60歳未満が対象。
非農家出身なら1年目月15万円(年180万円)→2年目月10万円→3年目月5万円=合計360万円です。
国の経営開始資金は年165万円なので、初年度額はこちらのほうが大きくなります。
⚠️ 出身によって金額が大きく変わります。非農家出身は3年で360万円ですが、兼業農家出身は1年目月15万円のみ、専業農家出身は1年目月5万円のみです。
⚠️対象は福井県知事または市長が認定した認定新規就農者で、就農後5年度以内の人。
⚠️法人として認定を受けた場合は一戸一法人に限られます。
同じ坂井市の新規就農者定住促進等事業は移住者向けで、⭐⭐空き家等活用支援金が家賃の10/10(全額)・上限5万円/月・最長4年間。
家賃の全額補助はほぼ例がありません。ほかに就農準備促進等事業支援金(18歳以上60歳未満・研修中に月5万円・最長1年)と、定住促進事業支援金(1年目月10万円→2年目月10万円→3年目月5万円=合計300万円・ 20歳以上60歳未満の認定新規就農者)があります。
⚠️ 空き家等活用支援金は就農準備促進または定住促進の支援金を受けていることが条件で、 ⚠️3親等以内の親族が所有する空き家は除かれます。
⚠️経営農地等のうち4分の3が市内の農地であることが必要。
⚠️国の資金と重複すると減額されます(就農準備は1/2、定住促進は1/5の額に)。
🔴返還規定があります=研修終了後1年以内に就農しない、交付期間の1.5倍の期間続けない、交付完了後3年以内に離農した場合など。
大野市(6件):毎年かかるものに、定額で、手間なく
大野市の6件は金額こそ小さいものが多いのですが、「毎年かかる資材」に定額で出し、しかも手続きが軽いという一貫性があります。
⭐大野市 生分解性マルチ普及促進事業は里芋用マルチ1本あたり1,600円の定額。
⭐申請は申請書兼請求書1枚と、納品書・領収書・通帳の写しだけです。
生分解性マルチは収穫後にそのまますき込めるので、はぎ取りと焼却処分の手間が減ります。
⚠️対象は販売目的で里芋を栽培する農業者で、市内の量販店等またはJAで購入したものに限られます(1本の規格は135cm×200m程度。
金額は令和8年度のもの)。
⭐⭐大野市 有機堆肥購入・散布費補助は購入が1立方メートルあたり1,000〜1,500円、散布委託が500円。
あわせて使えば最大2,000円/立方メートルの負担軽減になります。
この制度で感心するのは金額よりも仕組みのほうです。
- ⭐手続きは堆肥施設の管理者・散布事業者が農業者から委任を受けて行う=農家側の事務がほとんどない
- ⭐農家は補助金額を差し引いた金額を請求される=立て替えの負担がない
補助金はいったん全額払って、あとから戻ってくるのがふつうです。
先に払わなくていい設計は、資金繰りが厳しい小規模農家ほど効きます。⚠️対象の堆肥は大野市六呂師堆肥センターまたは富田酪農堆肥組合で製造されたものに限られ、 ⚠️散布補助は農協等へ委託した場合のみ(自分で撒く場合は対象外)。
⚠️申請期限が半期ごとに決まっています(1〜6月ぶんは9月末、7〜12月ぶんは翌年3月末)。
⭐大野市 クリーン農業スタート事業補助金は充電式の刈払機・噴霧器が1/2・上限1万円。
⭐既存のエンジン式機器を引き取ってもらう場合は上限が3万円に上がります。
⭐認定農業者などの要件がなく、農産物を出荷していれば個人でも使えます。
⚠️スペックの条件(充電式刈払機は18V以上・エンジン式23CC相当以上の出力、充電式噴霧器は10L以上のタンク・最高圧力0.5MPa以上)があるので、購入前に仕様を確認してください。
⭐大野市 結の故郷特産作物生産体制強化事業は里芋・ネギ・ナス・キク・穴馬かぶら・穴馬スイートコーンの6品目が対象で、 ⭐福井県特別栽培認証制度の認証を受けていると補助率が1/2→2/3に上がります。
⭐個人でも上限70万円(生産者グループ・農業生産組織は100万円)。
🔴 3年度以内に作付面積または出荷数量を1.2倍以上、かつ基準以上に拡大する義務があります。
⚠️基準=里芋10a/1,200kg、ネギ10a/2,700kg、ナス2a/900kg、キク10a/30,000本、穴馬かぶら2a/700個、穴馬スイートコーン5a/600本。
⚠️対象作物が2種類以上ある場合は、いずれかで基準を満たせば構いません。
⚠️補助対象経費の下限は10万円です。
大野市の6件のなかで、これだけは規模拡大が条件になっています。
⭐大野市 農業用ドローン操縦者育成支援事業はドローン本体ではなく「操縦資格」への補助(1/4・1人5万円)。
⭐機械を買う前の準備段階から使えます。
⭐防除等をドローンで受託する作業受託者も対象で、 ⭐複数人分をまとめて申請でき1回につき3人までです。
⚠️対象経費は10万円以上のものに限り(安価な講習は対象外)、 ⚠️年度内に複数回は申請できません。
⚠️予算の上限に達したら受付終了です。
大野市 越前おおの産農産物加工販売支援事業は自分で作った農産物の加工品の開発・リニューアルに1/2・上限15万円。
⭐商品開発だけでなく、販売・販路拡大の経費(出品手数料・サンプル輸送費・チラシ作成費など)も対象で、 ⭐レシピ開発・デザイン開発・成分分析といった委託料も入ります。
⚠️加工品の年間販売額が、事業実施の次年度から3年以内に30万円以上となる事業計画を示す必要があります。
越前市:100㎡程度の小さなハウス
越前市 小規模園芸施設整備事業は100㎡程度の小規模パイプハウスの資材費が対象で、 1/3以内・上限20万円。
⚠️市場・直売所への継続出荷、または学校給食への供給が条件です。
ハウスの補助はふつう「1棟50㎡以上」「500㎡以上」といった下限面積が設けられます。
100㎡程度を名指しで対象にする制度は多くありません。
ここにも小さく始める人を想定した設計が出ています。
福井で申請するときの注意点
- ⚠️県の制度でも窓口は市町。小さな農業応援事業は県費のみですが、申請窓口は市町の農業担当課です。
県のページを見て県に電話すると回り道になります - 🔴坂井市は「出身」で金額が3倍以上変わる。非農家出身は3年で360万円、兼業農家出身は1年目月15万円のみ、専業農家出身は1年目月5万円のみ。
自分がどれに当たるかを最初に確認してください - 🔴返還規定を先に見る。坂井市の定住促進は、研修終了後1年以内に就農しない・交付期間の1.5倍の期間続けない・交付完了後3年以内に離農した場合などが返還対象です
- ⚠️申請期限が短い制度がある。福井市のU・Iターン者就農奨励金は証明書等の発行日から3か月以内。
大野市の有機堆肥は半期ごと(1〜6月ぶんは9月末、7〜12月ぶんは翌年3月末)です - ⚠️「まるっと」猛暑対策は全部やらないと対象にならない。施設園芸は遮光/遮熱・換気/冷房・かん水をすべて実施することが条件です。
1つだけでは通りません - ⚠️国の制度との重複を確認する。坂井市は国の資金と重複すると減額(就農準備は1/2、定住促進は1/5に)。
一方で県の就農給付金(準備型)は国の準備資金と別枠とされています。
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まとめ:福井は「まだ決めていない」段階から探せる
- 見に行く旅費が出ない=⭐⭐福井市農のU・Iターン促進(交通費+宿泊1泊5,000円・決めていなくても可)
- 試してから決めたい=県のインターンシップ(1/2)/ ⭐県のお試し農福連携(10/10・10万円)
- 学んでから就農したい=ふくい園芸カレッジ(⭐修了後も圃場で最大4年)
- 50代で就農する=⭐⭐坂井市(1年目月15万円・3年で360万円)/ ⭐福井市(60歳未満・⭐雇用就農でも可)
- 移住して住まいを探す=⭐⭐坂井市の空き家(家賃10/10・最長4年)
- 規模は小さいまま売上を伸ばす=⭐⭐県の小さな農業応援(1/2・個人120万円・⭐市町の負担なし)
- 女性が新しいことを始める=⭐県の小規模農業者チャレンジ(2/3〜3/4)
- 小さなハウスを建てる=越前市(100㎡程度・1/3・20万円)
- 毎年の資材費を軽くする=⭐大野市(生分解性マルチ1本1,600円/ ⭐有機堆肥は立て替え不要/充電式刈払機は引取ありで3万円)
- ドローンの資格を取る=大野市(1/4・1人5万円・⭐作業受託者も可)
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