農地を借りるとき、普通は条件のいいところ探します。
四角くて、道がついていて、水が来て、日が当たる。
逆に、10アールに満たない、形がいびつ、進入路がない、鉄塔が立っている——そういう農地は誰も手を出しません。

津市は、その農地を借りると10アールあたり4万7,000円を出します。

⭐⭐耕作条件不利農地借受奨励金いう制度で、要綱に「耕作条件が不利」の定義そのものが書かれています。面積10アール未満、不整形、進入路がなく他人の耕作地を横断する、水路がなく揚水設備が要る、鉄塔等の障害物がある、日照時間が著しく短い——このうち2つ以上に当てはまる農地が対象です。
普通なら避ける条件が、そのまま要件になっているわけです。

三重にはこの発想が通っています。
⭐津市は機械を買い替えられない(農業所得400万円未満)に修繕費を、農家の生まれでない(農家台帳に登録がない人)に 100平方メートルの畑から使える機械補助を出しています。

掲載16件のうち6件が津市で、そのほとんどが金額は小さいが、拾う相手がはっきりしている制度です。

この記事では掲載16件を出し手ごとに金額つきで整理します。
一覧で見たい方は三重県の補助金一覧からどうぞ。

三重の内訳

出し手件数性格
津市6件⭐⭐悪条件の農地に10aで4.7万円/⭐修繕にも/⭐農家でない人に15万円
伊賀市3件⭐荒れ地は有機なら10aで5万円/⭐自伐林家の装備と講習/省力機械40%
三重県2件50〜65歳の就農に1/2・75万円/⭐女性を新規雇用する側の環境整備に40万円
松阪市2件柵は1/2・5万円(⭐7年で再申請可)/ジャンボタニシの薬剤3/10
鈴鹿市・亀山市・いなべ市各1件⭐柵は面積で上限12万円/資格・免許に1/2・5万円/⭐柵はまとまると80%
⚠️ この件数は当サイトの調査状況を反映した数字です。
三重県には29の市町村があり、表に出ていない市町村にも制度がある可能性は十分あります。
件数の順位を「手厚さの順位」と読まないでください。

🥇⭐⭐悪い条件が、そのまま要件になっている

津市 耕作条件不利農地借受奨励金は、条件の悪い農地を5年以上の期間で借り受けた場合10アールあたり47,000円交付します(定額・1筆ごとに面積で計算)。

要綱が定める「耕作条件不利農地」は、次の6つのうち2つ以上に当てはまる農地です。

  • ①面積が10アール未満
  • ②不整形で作業効率が悪い
  • 進入路がなく、他人の耕作地を横断する必要がある
  • ④水路がなく取水が困難で、揚水設備が要る
  • ⑤鉄塔等の大きな障害物がある
  • ⑥日照時間が著しく短い中山間地等

どれも「だから借り手がつかない」理由として挙がるものばかりです。その不利をそのまま金額に変えているのがこの制度で、集落に残った使いにくい農地を引き受ける人にとっては、条件が悪いほど有利になります。

⚠️ 3親等以内の親族間の使用貸借は対象外です(実家の農地を借りても出ません)。
⚠️対象は認定農業者・認定就農者・集落営農組織・地域計画に位置付けられた者。
⚠️農地中間管理事業または農地法3条の手続きを経た権利設定であることが必要で、当事者間の口約束では対象になりません。
⚠️同じ農地につき交付は1回限り。
⚠️申請期限は権利設定の公告日または農業委員会の許可日から1か月以内(年度末が先に来る場合は年度末まで)と短いので、契約したらすぐ動いてください
申請には借受農地一覧・農地の現況写真・位置図が必要です。

🥈津市の小口は「持っていない人」を拾う

津市の残り5件は金額こそ小さいのですが、誰を拾いたいのかがはっきりしています。

津市 小規模機械導入支援事業補助金は、対象が「新規農業者」=農家台帳等への登録がなく、 3親等以内の親族にも登録がない定義されています。
つまり農家の生まれでない人のための枠です。耕運機など耕作に必要な機械・道具が1/2以内・上限15万円。

必要な畑は100平方メートル(1アール)以上でよく 10アールにも届かない小さな区画から使えます。
認定農業者や就農計画の認定も要りません。🔴申請期限は「機械を購入する日の前日まで」で、買ってから申請することはできません。

津市 農作業機械等修繕費支援事業補助金は、買い替えではなく「修繕・点検整備」費用に1/2以内・上限10万円。
対象が農業所得400万円未満の農業者絞られていて、今の機械を使い続けたい小規模な農家のための制度です。

⚠️ 修繕費は対象経費の総額が5万円以上でないと申請できません。
⚠️市内で30アール以上耕作、または前年の農産物販売実績50万円以上が必要。
⚠️出張費・運送費・洗車代・時間外割増料金は対象外、 ⚠️燃料・オイル・クーラント等の消耗品の補給や交換も対象外、 ⚠️軽トラックなど汎用性の高いものも対象外です。
⚠️申請は修繕を実施した年度内(例年2月末日まで)に。

津市 農業後継者育成補助金農業大学校等の1年間の授業料の1/2・上限59,000円。
年齢要件が「年度初日に50歳以下」=国の就農支援(49歳以下)より1歳広いのが細かいところです。
⚠️対象は市内で農業経営を営む認定農業者の3親等以内の親族で、事業を継承する意欲のある人。
⚠️同一の人につき1回限り、 ⚠️申請期限は年度の4月末日と早いので入学が決まったらすぐ手続きを。

津市 経営基盤強化支援事業補助金【法人化】定款認証・登記申請の費用が1/2以内・上限12万1,000円、【人材雇用】新たに雇った就農者1名につき23万3,000円(定額)
⚠️人材雇用は1年以上の雇用契約が必要で、 ⚠️交付額の半分を就農者本人に支払った領収書実績報告に要ります。
⚠️申請期限は法人化が1月末、人材雇用が2月末です。

県の2件:50〜65歳と、女性を雇う

三重県 中高年新規就農者定着のための施設等導入支援は、50歳以上65歳未満で県内に新規独立・自営就農する対象で 1/2以内・1人あたり上限75万円。
国の就農給付(原則49歳以下)を補完する枠です。
⚠️独立・自営就農が前提で、雇用就農は対象になりません。

三重県 農業分野における多様な担い手確保事業(女性就労環境整備)は、雇う側の環境整備出る制度です。
現場環境改善施設(トイレ・更衣スペース等)と労力負荷軽減器具の導入経費が 1/2以内・一事業者あたり40万円。

条件は「女性を1名以上、新規に雇用すること」です。
⚠️すでに雇っている女性従業員だけでは対象になりません。⭐ただし単日・短時間の雇用も対象なので、繁忙期だけの短期パートでも要件を満たせます。⚠️対象は販売農家(経営耕地面積30アール以上、または直近3か年のいずれか1年の農産物販売金額が年間50万円以上)。
⚠️締切は例年8月下旬ごろで必着なので、年度が始まってから準備すると間に合わないことがあります(担い手支援課 059-224-2354)。

伊賀市の3件:荒れ地・山・省力化

伊賀市 耕作放棄地再生事業補助金は、菜たね作付・有機農業なら10アールあたり50,000円その他の作付けは10アールあたり30,000円。
補助金額は「単価×再生予定の農地面積」で決まるため、総額の上限がありません(=面積が広いほど増えます)。

⚠️ 対象は「自己所有地以外」の耕作放棄地です。
自分の遊休農地を直すためには使えません。
⚠️対象者は農事組合法人・任意組合・認定農業者等、 ⚠️対象農地は市内の耕作放棄地のうち農業振興地域内農用地に限られ、 ⚠️5年以上の権利設定が確実であること必要です。
💡有機で新規参入するなら、借りる農地をこの制度で再生してスタートするいう組み立てができます。

伊賀市 自伐林家等支援事業補助金は、自分で山を手入れするための制度です。

  • チェーンソー・手動ウインチ=1/2・上限5万円
  • バックホウ・ウインチ等=1/3・年50万円/機械レンタル=1/2・年20万円
  • 防護ズボン等の安全装備=1/2・年5万円
  • チェーンソー特別教育の受講費=全額(10/10)・上限3万円

装備と講習に出るのが実務的です。チェーンソーは事故が多く、防護ズボンは値が張るので後回しになりがちな装備で、そこを半額で見てくれるのは意味があります。

伊賀市 集落営農支援事業補助金は、ラジコン草刈機・農業用ドローン等の省力化技術機械が40%以内・上限200万円
その他の機械導入・施設新築改修は20%以内・上限100〜200万円(下限20万円)で、省力化技術の機械が最優先で採択されます。

🥉ジャンボタニシに2市、柵はまとまるほど有利

三重で特徴的なのは、ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の薬剤に 2つの市が補助を出していることです。
水田地帯ならではの制度です。

津市 ジャンボタニシ被害防除事業補助金薬剤・石灰窒素の購入費を1/3(上限額の設定はなく予算の範囲内)。
⚠️適正量を超える購入分は対象外、 ⚠️JA・農業共済など他機関の助成を受けている場合はその額が差し引かれます
⚠️例年2月末日必着です。

松阪市 ジャンボタニシ防除対策補助金薬剤購入費用の3/10(100円未満切り捨て)。
交付対象は農業者と集落営農組合で、個人でも申請できます。💡申請書は交付申請書と実績報告書が1枚になっていて手続きが簡単です。

⚠️ 松阪市は同一ほ場で薬剤を複数回散布しても補助対象は1回限り ⚠️薬剤に記載された適正量に相当する額が限度、 ⚠️市自ら「予算の範囲内で交付するため、必ずしも3/10の額が補助できるとは限らない」と明記しています
⚠️例年10月末が申請締切です。

鳥獣の柵は、まとまるほど率が上がるのが三重の特徴です。
鈴鹿市 防護柵設置費補助金資材購入費の1/2と受益地面積の区分額のうち少ないほう。
区分額は1,000〜2,000平方メートル未満で3万円、5,000平方メートル以上で12万円面積が広いほど上がります。

🔑 2人以上が所有する2筆以上の連続した農地なら1/2ですが、 1人が所有する農地での申請は1/4かつ区分額も半額になります隣の農家と一緒に申請するほうが有利です。⭐農地の所有者だけでなく、利用権設定・作業受委託契約がある耕作者や、所有者の同意書を得た耕作者も申請できます。
⚠️対象農地は1,000平方メートル(10アール)以上、 ⚠️過去5年間にこの補助金を受けている農地は対象外、 ⚠️着工前の交付申請と設置前の圃場写真が必要です。

いなべ市 獣害対策事業補助同じ考え方で、個人(1アール以上の田畑)は材料費の40%以内、受益2戸以上で受益面積50アール以上なら60%、300アール以上なら80%
⚠️金網等で囲う場合は1メートルあたり1,000円が材料費の上限、 ⚠️施工費・検電器・防草シート・送料は対象外(材料費のみ)、 ⚠️既存柵の更新も対象外です。
🔴申込→交付決定通知の受領後に資材購入→設置→実績報告(3月15日まで)順番を必ず守ってください。

松阪市 有害鳥獣防護柵設置補助金対象経費の1/2・上限50,000円(⚠️1世帯につき年度内1回)。
令和2年度から、申請年度から起算して7年を経過した土地は再度申請できるようになりました。
⚠️対象は防護柵の「資材費」のみで工事費は対象外、 ⚠️個人間で資材を譲り受けた場合など業者以外からの購入は対象外、 ⚠️登記地目が田畑以外の土地は申請できません。
⚠️実績報告のあと担当者が現地で設置確認検査をするので、検査が済むまで柵を設置しておくこと。柵の制度全般は鳥獣被害対策・狩猟免許の補助金どうぞ。

残る1件は亀山市 サステナブル農業奨励事業で、資格・免許・研修の受験/受講費用1/2・上限5万円。
ドローン操縦技能証明・食品衛生責任者など7種が対象で、リストにない資格も市長が認めれば対象になる場合があります
⚠️対象は営農区域に亀山市を含む認定農業者です。

三重で申請するときの注意点

  1. 条件の悪い農地こそ相談する。津市は10アール未満・不整形・進入路なし・鉄塔ありといった条件が2つ以上重なる農地5年以上で借りると10アールあたり4万7,000円。
    借り手がつかない農地ほど有利になります
  2. ⚠️親族間では出ないものがある。津市の借受奨励金は3親等以内の親族間の使用貸借が対象外小規模機械の「新規農業者」も3親等以内の親族に農家台帳の登録がないこと条件です
  3. 🔴買う前・着工前に申請する。津市の小規模機械は購入日の前日まで鈴鹿市・いなべ市・松阪市の柵はいずれも交付決定を受けてから購入・着工です
  4. ⚠️締切が早い・年度末に固まっている。県の女性就労環境整備は例年8月下旬必着、松阪市のジャンボタニシは10月末、津市の後継者育成は4月末日津市の法人化は1月末・人材雇用は2月末です
  5. 🔑ひとりで申請すると率が下がる制度がある。鈴鹿市は1人所有の農地だと1/4かつ上限半額、いなべ市は個人40%が受益2戸以上・50アール以上で60%、300アール以上で80%。
    隣と一緒に申請できないか先に確認してください
  6. ⚠️他機関の助成と重ならないようにする。津市のジャンボタニシはJA・農業共済等の助成額が補助対象経費から差し引かれます
    先に助成額が分かる書類を取っておいてください
  7. 💡「自己所有地では使えない」制度がある。伊賀市の耕作放棄地再生は自己所有地以外対象で、自分の遊休農地を直すためには使えません

まとめ:三重は「不利な条件」から探す

  • 条件の悪い農地を借りる=⭐⭐津市(10aで4万7,000円。
    ⚠️5年以上・⚠️親族間は不可)
  • 農家の生まれでないが始めたい=⭐津市の小規模機械(1/2・15万円。
    ⭐畑は100平方メートルから・⭐認定不要)
  • 買い替えられない機械を直す=⭐津市の修繕費(1/2・10万円。
    ⭐農業所得400万円未満)
  • 農業大学校に通う=津市(授業料1/2・5万9,000円。
    ⭐50歳以下・⚠️4月末日締切)
  • 法人にする・人を雇う=津市(法人化12万1,000円/雇用1名につき23万3,000円)
  • 50〜65歳で就農する=県(1/2・75万円。
    ⚠️独立・自営就農が前提)
  • 女性を新しく雇う=⭐県(トイレ・更衣スペース等に1/2・40万円。
    ⭐単日・短時間の雇用でも可)
  • 荒れ地を有機で再生する=⭐伊賀市(10aで5万円・ ⭐総額の上限なし。
    ⚠️自己所有地は不可)
  • 自分で山を手入れする=⭐伊賀市(⭐防護ズボン1/2・ ⭐チェーンソー特別教育は全額)
  • ラジコン草刈機・ドローンを入れる=伊賀市の集落営農(40%・上限200万円)
  • ジャンボタニシを防除する=津市(1/3)/ ⭐松阪市(3/10・⭐個人可・💡申請書1枚)
  • 柵を張る=⭐鈴鹿市(面積で最大12万円。
    🔑1人だと1/4)/ ⭐いなべ市(まとまると80%)/松阪市(1/2・5万円・⭐7年で再申請可)
  • 資格・免許を取る=亀山市(1/2・5万円。
    ⭐リスト外も市長が認めれば可)

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