国の就農支援には、はっきりした前提が3つあります。
専業であること、独立して自営すること、50歳未満であること。この3つのどれかから外れると、たいていの制度は入口で閉じます。

島根県は、その外側を県が正面から引き受けています。

⭐⭐半農半X支援事業「農業と他の仕事を組み合わせる」働き方が前提の制度です。
営農経費に月12万円(夫婦で共同経営なら月18万円)を最長1年=年換算で最大144万円、夫婦なら216万円。
施設整備にも1/3以内・上限100万円別メニューであります。

⭐⭐農業人材投資事業は、交付要旨に「国の就農準備資金・経営開始資金の対象外となる就農時50歳以上」書かれています。
年齢で国から落ちた人のための制度だと、県が明記しているわけです。

掲載16件のうち7件が県の制度で、市町村中心の他県とくらべても県の存在感が大きいのが島根の特徴です。

市町村では益田市が目を引きます。
有機農業を「まだやっていない人が試す」段階から5段階で支え人件費と上水道使用料にまで補助を出します。

この記事では掲載16件を出し手ごとに金額つきで整理します。
一覧で見たい方は島根県の補助金一覧からどうぞ。

島根の内訳

出し手件数性格
島根県7件⭐⭐半農半Xに月12万+施設100万/⭐50歳以上の受け皿/産地は3年3,000万
益田市3件⭐⭐有機は5段階/⭐人件費・水道代に補助/国の上限を超えた分に上乗せ
松江市2件⭐中古機械も1/3・150万/⭐スマートは下限2.5万円から。⚠️どちらも受付が短い
雲南市2件⭐研修生に月12万+受入農家に月3万/⭐加算条件4つで上限が50万に
出雲市・安来市各1件⭐北山山系のシカ対策は全額/⭐捕獲檻は上限なし/個人10万・団体30万
⚠️ この件数は当サイトの調査状況を反映した数字です。
島根県には19の市町村があり、表に出ていない市町村にも制度がある可能性は十分あります。
件数の順位を「手厚さの順位」と読まないでください。

🥇⭐⭐「専業でなくていい」と県が制度で言っている

島根県 半農半X支援事業(営農経費の助成)は、農業+別の仕事の組み合わせが前提制度です。
専業就農でなくてよいことが、制度の側にはっきり書かれています。

  • 月12万円(夫婦で共同経営なら月18万円)を最長1年間=年換算で最大144万円、夫婦なら216万円
  • ⚠️対象はUIターン者(県外から移住して就農する方)
  • 国の経営開始資金は「自営で独立就農」が前提ため、そこに当てはまらない人の受け皿になります

⭐これとは別に半農半X支援事業(施設整備の助成)あり、就農時に必要な施設整備が1/3以内・上限100万円
暮らしの費用と設備の費用を、県が2本立てで持っている形です。

💡 営農経費と施設整備は別メニューなので、両方あわせて相談してください(島根県農業経営課 0852-22-5139)。
「半農半X」は島根県が推進してきた働き方で、これを正面から補助制度にしている県はほとんどありません。

⭐⭐50歳以上を、県が名指しで拾う

島根県 農業人材投資事業(準備型・経営開始型)は、交付要旨に「国の就農準備資金・経営開始資金の対象外となる就農時50歳以上」明記されています。

  • 準備型=UIターン者は月12万円(年144万円)、県内者は月6万円(年72万円)最長1年
  • 経営開始型=年72万円を最長2年間
    夫婦で共同経営なら1.5倍
  • 50歳未満でも「親元研修で国の就農準備資金の対象外になる人」は準備型の対象に含まれます
⚠️ 前年の世帯所得600万円以下 ⚠️県認定の研修機関で原則6か月かつ概ね600時間以上の研修(準備型)、 ⚠️県の農業経営人材育成研修プログラム(準備型は初級・経営開始型は中級コース等)の受講・修了が要件です。
⚠️UIターン者は住民票の異動から概ね1年以内・就農開始後は県内に5年間居住が条件、 ⚠️経営開始型は交付期間と同じ期間・同程度の営農継続が必要(やめると返還)。
ふるさと島根定住財団の産業体験期間と地域おこし協力隊の活動期間は、「住民票異動から1年以内」の計算から除かれます体験してから就農でも間に合う設計です。

国の制度から外れた場合の探し方は国の補助金から落ちた人が使える県・市町村の制度あわせてどうぞ。

🥈益田市は「試す段階」と「人と水」に出す

益田市 有機農業推進事業費補助金は、有機農業を5段階で支えます。
⭐⭐①チャレンジ支援の対象が「慣行栽培農業者および新規栽培者」まだ有機をやっていない人が試すための枠が、いちばん最初にあります。

段階補助率・上限
⭐①チャレンジ支援(慣行栽培の人・新規の人)1/2以内・上限30万円(3回まで)
②有機JAS認証の新規取得初回は定額・上限50万円/2〜3回目は1/2・25万円
③既存取得者の面積拡大1/2以内・上限25万円
④有機農業産地づくり1/2以内・上限25万円
⑤産地協議会等の貸出用機械1/3以内・上限200万円

「慣行栽培の農家が有機を試す」段階から補助対象にしている自治体はほとんどありません。転換の入口を市が用意しているのが益田市の特徴です。

⚠️⚠️ 有機JASの新規取得支援は「国際水準GAPの取得」が必須要件です。
有機JASだけ取ればよいわけではなく、GAPと並行して進める前提の設計なっています。
⚠️③の面積拡大は前年比で純増する拡大であることが必要、 ⚠️市税等の滞納がないこと、⚠️帳簿は交付決定年度の翌年度から5年間の保存義務、 ⚠️この要綱は令和10年3月31日で失効します
💡益田市には別に「有機JAS認証取得支援事業費補助金交付要綱」もあるので、どちらで申請するかは市に確認してください。
有機の制度全般は有機・自然栽培で就農するときの補助金どうぞ。

⭐⭐益田市 農業参入育成支援事業費補助金は、補助対象が人件費・農業用水・水道使用料いう珍しい制度です。

  • 人件費=新規雇用の開始月から12か月間の基本給総額の1/2(上限100万円)
  • 農業用水の確保ための工事・設備=1/2(上限100万円)。
    中山間地では水の確保が最初の壁になります
  • 上水道使用料=1立方メートルあたり100円(上限200万円)

補助金の多くは設備投資向けで、人を雇う費用や水道代は自己負担というのが普通です。そこを見る自治体は例外的です。

⚠️ 対象は法人で、個人経営は対象になりません。⚠️規模の要件もあり、延べ3,000平方メートル以上の施設設置、 5ヘクタール以上の農地集積、または年間の家畜増加(肉用牛40頭・乳用牛20頭・種雌豚30頭など)のいずれかが必要です。
⚠️対象は中山間地域での新規農業参入または事業拡大に限られます。
💡個人での就農では規模要件に届きません。
法人化して規模を追う段階の制度です。

🥉国の上限を超えた分に、市が上乗せする

益田市 新規就農者初期投資促進事業費補助金は、基本が対象経費の3/4以内(国の上限額が上限)。
ここまでは国の経営発展支援事業と同じです。
効いてくるのは加算ほうです。

  • ⭐⭐ハウス等整備事業に該当する場合=「上限3,000万円から国上限額を差し引いた金額」の2/3以内が加算
  • ⭐市担い手経営発展支援事業に該当する場合=「上限3,000万円(経営継承は600万円)から国上限額を控除した金額」の1/3以内が加算

国の上限(一般に1,000万円)で頭打ちになる部分に、市が続きを出す設計です。
施設園芸で大きな投資をする新規就農者ほど、加算のほうが大きくなります。

⚠️ 対象は50歳未満の新規就農者で、年齢の壁があります(50歳以上は前述の県の農業人材投資事業へ)。
⚠️国要綱で定める基準を満たすことが前提=国の事業に採択されることが実質の入口です。
⚠️市税等の滞納がないこと、 ⚠️この要綱は令和9年3月31日で失効します
🔴加算の計算は「上限3,000万円 − 国上限額」に対する割合です。
制度が複雑なので、投資計画の段階で必ず市の農林水産課と詰めてください。

県の残り4件:産地・ハウス・省力化・認証

島根県 地域主導型産地創生支援事業3年間で3,000万円以内(単年度1,500万円以内)の大型事業です。
🔴事業実施主体は「農林漁業者等の組織する団体」で、個人では申請できません。まず産地ビジョンの作成から始まり、調査・実証・試作・研修等に定額50万円以内。
⚠️産地ビジョンが事前に承認されていることが実行支援の前提です。
⚠️基本型は市町村等から総事業費の1/6以上の補助を受けることが確実であることが条件、 ⚠️発展的更新型は「当初の目標の2倍以上」の達成が求められます。

島根県 ハウス等整備事業ハウス本体・施工費・かん水設備・養液システム・栽培棚まで対象。
国のパワーアップ事業と併用すると施工費1/2の上乗せ、国庫に乗れなくても市町村の同額助成とセットで県1/4が出ます。⭐牛舎等は上限1,100万円(リース型1,700万円)と畜産にも対応しています。

⚠️ ハウス内の環境モニタリング装置の設置が必須要件です(スマート農業の入り口とセットになった設計)。
⚠️農業保険(園芸施設共済等)への加入が必須、防災に配慮した構造も要件、 ⚠️一部メニューは交付決定後1年以内の国際水準GAP取得が条件です。

島根県 農業省力化投資支援事業省力化の機械・設備が1/3・上限150万円。
⚠️対象は経営耕地30アール以上または年間農産物販売50万円以上の農業者で、 ⚠️単純更新(買い替え)は対象外 ⚠️単位労働時間3%以上の削減が見込める計画であることが条件です。
⚠️令和8年度の第1回公募は6月8日〜26日で終了しているので、第2回以降の有無は県へ確認を。

島根県 美味しまね認証等取得支援事業1/2以内・上限10万円と小さいのですが、事業費3万円から使える少額設計で、農薬保管庫・消火器・測定計量機器・施設補修材料・ ⭐作業記録アプリの利用料・土壌/水質検査まで対象になります。
⚠️対象は認定新規就農者・農業経営開始5年以内の青年等で、 ⚠️「美味しまね認証」または国際水準GAP認証を初めて取得する人が対象。
✅受付は令和9年1月29日まで通年なので、今からでも間に合います。

市町村の残り:機械・研修・鳥獣

松江市は2本とも受付期間が短いのが共通の注意点です。
松江市 省エネ・省力化農業機械導入緊急支援事業補助金1/3以内・上限150万円(1台あたり10万円以上)。
中古機械も対象(残存耐用年数2年以上/新品は耐用年数5年以上)で、中古が対象になる制度は少ないので更新費用を抑えたい人に向きます。⚠️令和8年度は5月18日〜5月29日の2週間だけの受付でした。

松江市 スマート農業導入支援事業費補助金1/2・上限75万円。
下限が2.5万円と低く、小さな機器でも申請できます。⚠️令和8年度は7月8日〜7月28日の受付で、募集期間が3週間ほどと短いので年度当初に市ホームページを確認しておくこと(農政課 0852-55-5224)。

雲南市 就農サポート事業助成金研修生に月12万円(研修期間は3か月以上2年以内)。
受入農家にも研修生1人につき月3万円出るので、受け入れ先が見つかりやすい設計なっています。
⚠️雇用契約がある場合は2年目から月8万円、 ⚠️親族と同居の場合は1年目から月8万円下がります。
⚠️対象は満18歳から50歳まで、⚠️普通運転免許を持っていることも要件です。

雲南市 農業担い手フォローアップ事業補助金1/2以内・上限30万円ですが、加算条件が4つあり、どれか1つに当たれば+20万円で上限50万円なります ——①スマート農業②2年以内に有機JAS認証を取る③事業費300万円以上④1年以内に法人化する。
女性が参画しやすくするための環境整備も対象経費に明記されています。
⚠️現在の経営規模を維持・拡大し、引き続き5年以上農業経営を行う見込みがあることが条件です。

鳥獣は出雲市 有害鳥獣被害対策事業1/2以内・上限30万円(⚠️対象経費4万円以上)。
✅個人でも申請できます。
北山山系内のシカ対策だけは別枠で、防護ネットが10/10(全額)・上限30万円、電気牧柵器の本体も10/10・上限7万円
⭐イノシシ・カラスの捕獲檻は2/3以内で上限額の定めがありません
⭐電気牧柵の電圧を遠隔監視するシステムも対象です。

⚠️ 出雲市は同一年度に使えるのは1回だけ 🔴申請前に買ったり設置したりしたものは対象外です。
安来市 有害鳥獣被害防止対策事業費補助金1/2以内で限度額が個人10万円・団体30万円
✅個人で申請できます。
🔴電池・バッテリー・ガスボンベ等の交換や汎用品の購入費は対象外 ⚠️当該年度に市内に設置したものに限られ、⚠️設置前後の写真の添付が必要です。
⚠️受付は4月〜12月で、予算状況により年度途中で終了する場合があります。

島根で申請するときの注意点

  1. 「専業・独立・50歳未満」から外れていても、まず県に聞く。半農半Xは専業でなくてよく、農業人材投資は就農時50歳以上を対象と明記しています。
    島根では、国で断られた条件がそのまま県の入口になります
  2. ⚠️県の制度はUIターンが条件のものがある。半農半Xは営農経費・施設整備とも県外からの移住が要件です。
    ⭐ただし産業体験や地域おこし協力隊の期間は「移住から1年以内」の計算から除かれます
  3. ⚠️受付が2〜3週間しかない制度がある。松江市の省エネ機械は5月下旬の2週間、スマート農業は7月の3週間ほど。
    年度当初に市のページを確認しておかないと届きません
  4. 🔴買う前・設置する前に申請する。出雲市・安来市の鳥獣対策はどちらも事前申請が必要で、安来市は設置前後の写真要ります
  5. ⚠️有機JASにGAPが紐づいている。益田市の有機JAS新規取得支援は国際水準GAPの取得が必須要件です。
    並行して進める前提で計画を立ててください
  6. ⚠️法人でないと使えないものがある。益田市の農業参入育成(人件費・水道代)は法人が対象で、規模要件も高めです。
    県の産地創生も団体が実施主体で個人では申請できません
  7. ⚠️失効期限のある要綱がある。益田市の有機農業推進は令和10年3月31日、新規就農者初期投資促進は令和9年3月31日で失効します。
    使うつもりなら期限から逆算してください

まとめ:島根は「国で断られた条件」から探す

  • 専業にしない=⭐⭐県の半農半X(月12万/夫婦18万+施設1/3・100万。
    ⚠️UIターン)
  • 50歳を過ぎている=⭐⭐県の農業人材投資(準備型 UIターン月12万/県内月6万・経営開始型年72万×2年)
  • 有機を試してみたい=⭐⭐益田市のチャレンジ支援(1/2・30万・3回まで。
    ⭐まだやっていない人が対象)
  • 有機JASを取る=益田市(初回は定額50万円。
    ⚠️⚠️国際水準GAPの取得が必須)
  • 人を雇う・水道代が重い=⭐⭐益田市の農業参入育成(人件費1/2・100万/上水道1立方メートル100円・200万。
    ⚠️法人のみ)
  • 国の上限で足りない=⭐益田市の初期投資促進(国上限を超えた分に加算。
    ⚠️50歳未満)
  • ハウスを建てる=⭐県のハウス等整備(⭐国庫に乗れなくても市町村の同額助成とセットで1/4。
    ⚠️環境モニタリング装置が必須)
  • 作業時間を減らす=県の省力化投資(1/3・150万円。
    ⚠️単純更新は対象外・労働時間3%削減の計画が必要)
  • 認証で販路を作る=⭐県の美味しまね認証(1/2・10万円。
    ⭐事業費3万円から・⭐作業記録アプリの利用料も対象)
  • 中古機械で更新する=⭐松江市の省エネ機械(1/3・150万円。
    ⚠️受付は5月下旬の2週間)
  • 小さな機器を試す=⭐松江市のスマート農業(1/2・75万円。
    ⭐下限2.5万円)
  • 研修生を受け入れる=⭐雲南市(研修生に月12万+ ⭐受入農家に月3万)
  • 上限を引き上げる=⭐雲南市のフォローアップ(⭐加算条件4つのどれか1つで30万→50万)
  • 柵を張る=⭐出雲市(⭐北山山系のシカ対策は全額・⭐捕獲檻は上限なし)/安来市(個人10万・団体30万。
    🔴電池の交換は対象外)

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