東京都の農業補助金を20件並べてみると、他の道府県とはっきり違う点が1つ出てきます。

作る設備より、売る設備のほうが補助率が高いいうことです。

農産物用の自動販売機は4/5農業体験農園の整備も4/5
学校給食への野菜供給と農産物の即売は3/4
摘み取り園と直売所は2/3
いっぽうで区市が出す機械の補助は、八王子市が上限10万円小平市が30万円、日野市が40万円、あきる野市が50万円です。
地方の県で見かける「機械に500万円」「ハウスに1,600万円」とは桁が違います。

理由ははっきりしています。
畑の隣に消費者が住んでいるからです。
東京で農地を残す近道は、規模を広げることではなく売り場をつくることで、補助金の設計もそこに寄っています。

この記事では掲載20件を出し手ごとに金額つきで整理します。
一覧で見たい方は東京都の補助金一覧からどうぞ。

東京の内訳

出し手件数性格
東京都7件⭐⭐大きい金額はすべてここ(7/8・7,500万円)/🔴前年度に申し込む
練馬区6件⭐摘み取り園2/3・マルシェ・生分解性マルチ/JA部会が前提
日野市3件⭐学校給食3/4・即売3/4/認定の有無で補助率が倍
八王子市2件上限10万円だが使いみちが広い/獣害柵は認定不要
小平市・あきる野市各1件⭐直売所2/3/⭐65歳未満まで対象
⚠️ この件数は当サイトの調査状況を反映した数字です。
東京都には62の区市町村があり、表に出ていない自治体にも制度がある可能性は十分あります。
件数の順位を「手厚さの順位」と読まないでください。

🥇売る設備には4/5、買う機械には上限10万円

京の性格がいちばんよく出るのが、この対比です。
同じ都・区市が出している制度なのに、お金の向かう先で補助率も上限もまるで違います。

何に出るか補助率出し手・上限
農産物用の自動販売機4/5東京都(⚠️税抜50万円超・過去に未利用)
農業体験農園の整備4/5以内東京都(上下水道・区画割り・土留め・フェンス)
学校給食用の野菜供給3/4日野市・1団体20万円
農産物の即売3/4日野市(予算の範囲内)
新規の摘み取り園2/3練馬区・300万円
直売所施設の整備2/3小平市・50万円
販売促進・商品開発2/3以内東京都・333万3千円
マルシェの開催1/2練馬区・1団体年間30万円
機械・資材の購入1/2八王子市・上限10万円
営農施設・機械2/3日野市・上限40万円(⚠️総事業費60万円以上)

読み方としては、「作る側の投資は都の大型事業に回し、区市の小口は売り口に使う」のが東京では合理的だ、ということになります。
区市の機械補助を集めても100万円に届きませんが、自販機を1台置く、体験農園を1区画つくる、給食に納める——これらには4/5や3/4という他県ではまず見ない補助率ついています。

東京都の7件

大きい金額はすべて都にある

東京農業経営強靱化事業最大です。
基本メニューが3/4以内、⭐⭐アップメニューは7/8以内原則7,500万円(認定新規就農者は累計補助上限4,375万円)。
アップメニューの条件は新規就農者・スマート農業・温室効果ガス排出削減・労働環境快適化・GAP/エコ農産物推進いずれかです。
パイプハウス等の生産施設(改修を含む)、流通・販売施設、農畜産物加工施設、農業機械、果樹改植などが対象になります。

🔴 例年、事業実施の前年5月上旬が申込時期です。思い立った年度には間に合いません。
⚠️対象は認定農業者・認定就農者なので、まず認定を受けるところから逆算してください。
窓口は区市町村です。

新規就農なら東京都 新規就農者初期投資支援事業(持続可能な東京農業支援事業)3/4以内・上限375万円
自己負担は4分の1で、全国的にも高い補助率です。
ビニールハウス・果樹棚・灌水施設、農産物自動販売機・調製機・冷庫・梱包機、トラクター・管理機・草刈機とその附帯工事(電気・水道)が対象で、生産施設の修繕(張り替え用ビニール・補修用パイプ)と土壌改良資材も対象です。
新設だけでなく手直しにも使えます。

⚠️ 同一の補助事業者への補助は1回限りです。
使いどころを見極めてください。
⚠️補助対象経費が50万円以上のものが対象。
🔴新規就農者定着支援施設整備事業・山村離島振興施設整備事業・都市農業経営力強化事業・東京農業経営強靱化事業で事業を実施した人は対象外です。

機械の自動化なら東京型スマート農業実装化促進事業2/3以内・上限333万円。
⚠️対象外が明確に決まっているのが特徴で、ハウス・水耕栽培施設等の設置、栽培用照明、自動天窓開閉、自動カーテン、炭酸ガス発生装置、ヒートポンプは(都の他の事業で対応するため)対象外です。
🔴リース導入と中古品も対象外で、買い取りの新品に限られます。

今年度まだ間に合うのはこの3メニュー

持続可能な東京農業支援事業令和8年度の申請が9月14日までです。
3つのメニューがあります。

  • 暑熱対策推進=労働環境改善のための暑さ対策機器・資材が2/3以内・上限約133万円(下限約13万円)
  • 農作業省力化推進=省力化につながる機器が1/2以内・上限100万円(⚠️補助対象経費20万円以上、1機械・資材あたり10万円以上)
  • 環境配慮型転換=農薬使用量や石油由来廃棄物の削減につながる生産資材が 1/2以内・上限100万円(下限10万円)
⚠️ 申請窓口は東京都ではなくJA東京中央会(都市農業支援部東京農業推進室 042-528-1375)です。
新規就農者初期投資支援・東京型スマート農業も同じ窓口・同じ受付期間(令和8年度は5月1日〜9月14日)。
都庁に問い合わせると回り道になります。

売り方に投資するなら「チャレンジ農業支援」

東京都 チャレンジ農業支援事業費助成金は、販売促進(イベント・広告・PR・ホームページの開設)や商品開発(試作・分析)が2/3以内・1事業20万〜333万3千円
都内農業者・就農予定者・グループが対象で、チャレンジ農業支援センターの派遣専門家の助言を受けながら進める形になっています。

「HP開設」が正面から補助対象に入っているのは、東京が販路づくりを本気で見ている証拠です。
直売所や自販機と違って置き場所が要らず、収穫期以外も動き続ける売り口なります。

農地そのものにお金が出る2つ

⭐⭐東京都 農地長期貸借促進奨励事業もらえるのが農地を貸す側です。
10年以上の契約で1,000㎡あたり120万円2年契約なら1,000㎡あたり20万円(⚠️初めて交付を受ける農地に限る)。
⚠️都市農地貸借円滑化法第4条に基づく新規の賃貸借契約であることが必要で、🔴2親等以内の親族との貸借は対象になりません

借りたい側から見ると、これは地主に伝える材料なります。
「貸すと固定資産税や相続の扱いがどうなるか分からない」という理由で止まっている話に、金額の裏づけを1つ足せるからです。

もう1つが未来に残す東京の農地プロジェクトで、こちらは農地を増やす・戻すほうの制度です。

  • ⭐農産物用自動販売機は4/5(⚠️事業経費が税抜50万円超・過去に未利用)
  • ⭐農業体験農園の整備も4/5以内(⚠️下限50万円)
  • 宅地を農地に転換する工事は事業費の23/30(解体・徐礫・深耕・客土など。
    ⚠️1区画100㎡以上)
  • ⭐農地の再生は23/30、認定新規就農者なら17/20(老木化した果樹園の再整備・作目転換。
    ⚠️1区画300㎡以上)
🔴 例年、事業実施の前年4月中旬が申込時期です。⚠️いずれも整備後8年間は農地として活用することへの同意が必要で、総事業費が税抜50万円未満の事業は対象外です。
⚠️農業体験農園は建築確認が必要な倉庫・客土・駐車場・消耗品が対象外になります。

練馬区(6件):区の制度がいちばん厚い

練馬区 都市型農業経営事業立場で補助率が変わるのが特徴です。
認定農業者1/2・都市型認定農業者1/3に対して、認定新規就農者は2/3いちばん高く、機械なら上限500万円。
⭐観光・交流型農園の開設(上限200万円)とPR事業(上限50万円)も対象に入っています。
⚠️都市型認定農業者は5年後の目標所得200万円以上、認定農業者は300万円以上が認定の目安です。

練馬果樹あるファーム事業新しく摘み取り園を始めるなら2/3以内(対象経費の上限300万円)。
既存の拡充(1/2)や新規直売所(1/3)より高く設定されていて、「新しく開く」ほうが有利作りです。
パイプハウス・果樹棚の整備や苗木の購入といった整備事業に加えて、案内板・のぼり旗の作成といった広報事業も対象になります。
⚠️区内の生産緑地であること、区の広報物に農園情報を掲載することへの同意が条件です。

練馬区 ねりマルシェ事業会場使用料・設営経費が1/2・1団体年間30万円。
申込みが通年なので、開催が決まった時点で相談できます。
直売所を持たない農家でも使える枠です。

資材まわりでは練馬区 環境保全型農業推進事業3メニュー。
分解性マルチがいちばん手厚く2/3・1名につき年10万円減農薬資材等は1/2・年7.5万円(⚠️東京都エコ農産物認証を受けた方が対象)、有機質肥料・有機質堆肥は1/3・年5万円です。
⚠️申込みは例年6月・11月の年2回で、申込書はJA各地区アグリセンターから対象者に送られます。

練馬区 コンポストシュレッダー整備事業ウッドチッパー・マルチチッパーの購入が1/2・1機種あたり100万円以内。
剪定枝を畑の外に出さずに処理するための機械で、住宅に囲まれた農地ならではの制度です。
⚠️JA東京あおばが選定した機種に限られ、申込の翌年秋頃から2月末頃までに納品することが必要です。

練馬区 生産緑地保全整備事業公道・隣地と接する部分の土留めやフェンス、農薬の飛散を防ぐ防薬シャッター防災用農業井戸が対象で通常1/2。
都の事業に合致すると認定されれば4/5以内上がります。
🔴例年、事業実施の前年4月中旬が申込時期です。

⚠️ 練馬区の制度はJA東京あおばの対象部会、または各地区青壮年部への所属条件になっているものがあります(環境保全型・コンポストシュレッダー・生産緑地保全)。
制度を使う前提として先に部会へ入っておく必要があります。

日野市(3件):給食と即売に3/4

日野市 都市農業の営農支援メニュー小口ですが補助率が高い枠です。
学校給食用野菜の供給が3/4・1団体につき上限20万円農産物即売も3/4(予算の範囲内)。
都市農業では給食が安定した売り先になるため、そこを厚く支えています。
同じ要綱には防鳥・防薬対策(1/2・1購入者につき上限30万円)と獣害対策の電気柵(1/2・1農業者につき上限5万円)もあります。
⚠️多摩地域はハクビシン・アライグマの被害があり、住宅地に隣接する畑では農薬の飛散対策も必須になります。

機械・施設は日野市 営農施設等整備事業で、認定農業者等なら2/3・上限40万円、それ以外は1/3・上限20万円補助率が倍違います。
⚠️総事業費60万円以上が対象なので、60万円未満の買い物では使えません。

令和8年度に新しくなったのが日野市 未来につなげる農業支援補助金です。
区分が3つあり、⭐⭐区分③=2/3・上限100万円最も高い枠。
これは区分①の対象者が「農業の多面的機能の波及効果が見込まれる事業」行う場合の加算です。
例として、地元の商業・飲食店と連携する農業体験イベント+直売マルシェ、福祉作業所・障がい者就労支援施設と連携する生産・加工、地元農産物を使うレストランの運営が挙げられています。

区分①(1/2・50万円)の対象には市内小中学校の学校給食供給農家入っており、認定農業者・認定新規就農者・東京都エコ農産物認証取得者と同じ扱いです。
区分②(区分①以外の農業経営者)は1/3・20万円。

🔴 申請書類は事前に連絡した人にだけ配布されます。締切までに都市農業振興課へ連絡しないと、そもそも申請できません(令和8年度の二次募集は7月31日までに連絡・8月21日提出期限で終了)。
⚠️総事業費が20万円以上の事業が対象で、事業効果が見込まれる事業を優先して採択する審査方式です。

八王子市・小平市・あきる野市

八王子市 認定農業者等支援事業費補助金1/2以内(税抜)上限10万円小さいぶん、使いみちが広いのが利点です。
トラクター・管理機などの機械、パイプハウスの全張替、農業用ドローン、保冷庫・直売所施設まで対象になります。
申請から交付決定まで1〜2週間、実績報告から確定まで1〜2週間が目安と手続きも軽く、最初の一歩に向く制度です。
⚠️交付決定前に購入したものは対象外なので、必ず購入前に農林課へ連絡してください。

八王子市 農作物獣害防止対策費補助金認定農業者でなくてよく市内で継続的に農産物を生産していれば対象です。
電気柵一式(パワーユニット・通電ワイヤー・支柱等)と防護柵一式(金網柵・トタン板・ネット等)が 1/2・上限5万円。
前期(4月〜7月末)・後期(10月〜翌年1月末)の各1回ずつ申請できるので、年2回のチャンスがあります。

小平市 地域農業担い手支援事業補助金認定就農者だと補助率が1/2→2/3に上がります(就農して間もない人が有利)。
通常の事業は1/2・上限30万円ですが、直売所施設の整備は2/3・上限50万円厚い。
農業用資材・機械の購入だけでなく、経営管理機器、広告・宣伝、講習の受講まで対象に入っています。
⚠️募集が3月下旬〜4月中旬と早く、認定計画との整合性を市が審査します。

あきる野市 新規就農者提案型農業経営支援事業補助金施設・機械の購入費が1/2以内・上限50万円。
対象が65歳未満で、国の資金(49歳以下)に年齢で乗れない 50〜60代も使えます。
⚠️秋川・五日市・十里木長岳のいずれかの農畜産物直売組合の会員(見込み含む)であること条件で、ここでも売り先とセットなっているのが東京らしいところです。
⚠️市内の農地の所有または5年以上の利用権、市税の完納も要件です。

東京で申請するときの注意点

  1. 🔴大きい制度は「前年度」に申し込む。東京農業経営強靱化事業は例年、事業実施の前年5月上旬。
    未来に残す東京の農地プロジェクト(自販機・宅地転換・農地再生・体験農園)と練馬区の生産緑地保全整備は前年4月中旬です。
    今年やりたいことを今年申し込んでも間に合いません。前年度の要望調査については前年度の要望調査で決まる補助金の記事あわせてどうぞ
  2. ⚠️窓口が都庁ではないことがある。持続可能な東京農業支援事業の3事業(新規就農者初期投資・東京型スマート農業・暑熱対策等)はJA東京中央会申請窓口です。
    東京農業経営強靱化事業と未来に残す東京の農地プロジェクトは区市町村経由、農地長期貸借促進奨励事業は東京都農業会議窓口になります
  3. ⚠️認定の有無で補助率が倍違う。日野市は1/3と2/3、練馬区は1/3〜2/3、小平市は1/2と2/3。
    都の主力事業はそもそも認定農業者・認定就農者が対象です。
    認定農業者の記事先に条件を確認しておくと、取れる制度の幅が変わります
  4. ⚠️JAの部会に入っていることが条件の制度がある。練馬区の環境保全型農業推進・コンポストシュレッダー・生産緑地保全整備は JA東京あおばの部会または各地区青壮年部への所属が原則です
  5. ⚠️生産緑地であることが条件の制度がある。練馬区の果樹あるファーム・コンポストシュレッダー・生産緑地保全整備、日野市の未来につなげる農業支援(区分の入口)などが該当します。
    自分の農地の指定状況を先に確認してください
  6. ⚠️下限額の設定が多い。日野市の営農施設等整備は総事業費60万円以上、未来につなげる農業支援は20万円以上、東京都の新規就農者初期投資は補助対象経費50万円以上、未来に残す東京の農地プロジェクトは税抜50万円以上。
    小さい買い物では使えない制度があるいう点は、上限の低さとあわせて見ておく必要があります

まとめ:東京は「売り先」から逆算して探す

  • 自販機・体験農園をつくる=未来に残す東京の農地プロジェクト(⭐4/5)
  • 学校給食に納める・即売する=日野市(⭐3/4)
  • 摘み取り園を開く=練馬区(2/3・300万円)
  • 直売所をつくる=小平市(2/3・50万円)/八王子市(1/2・10万円)
  • 販路・商品開発・HP=東京都チャレンジ農業支援(2/3・333万円)
  • 新規就農する=東京都(3/4・375万円)/練馬区(認定新規就農者2/3)あきる野市(⭐65歳未満・50万円)
  • 大きく設備投資する=東京農業経営強靱化事業(⭐⭐7/8・7,500万円。
    🔴前年5月上旬に申込)
  • 農地を貸す=農地長期貸借促進奨励事業(⭐1,000㎡あたり120万円)
  • 今から間に合わせる=持続可能な東京農業支援事業(暑熱対策2/3ほか・令和8年度は9月14日まで)

年齢で国の制度から外れた方は国の補助金から落ちた人が使える県・市町村の制度鳥獣の柵は鳥獣被害対策の補助金あわせてどうぞ。
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